JFLに属する鈴鹿ポイントゲッターズMF海口彦太(うみぐち・げんた、24)の右腕には、キャプテンマークが巻かれていた。16日、ノエスタで行われた天皇杯2回戦。3つ上のカテゴリーとなるJ1ヴィッセル神戸からの得点を目指し、前線で体を張り続けた。だが、結果は0-4。完敗だった。

「個の部分だとボールを止める、蹴る、体の使い方…。当たり前のことの基準が高かった。そのレベルに向けて練習しているにも関わらず『ここまで差があるか』とショックな感じです」

神奈川・桐蔭学園高、関西学院大と歩んできた男は、思いを素直に明かした。

ピッチを離れると「チーム営業」という、もう1つの肩書を持つ。スポンサーに向き合う仕事を、並行して取り組んでいる。Jリーガーに比べ、サッカーに打ち込む時間は制限される。

この日の試合後、その点を問われた。海口はきっぱりと言い切った。

「負担になっていることはほとんどないですね。逆に自分たちがパワーをもらっている。スポンサー営業を含めて(地域と)密接に関われる。行く度に『次の試合頑張ってよ』『あそこ惜しかったね』と言われる。こういうスポンサーの皆さん、多くの人々の力があって、サッカー選手でいられている。そこに関しては、フロントスタッフに入って良かったなと思います」

1年前は初戦敗退だった天皇杯。1回戦を突破し、神戸に挑戦する権利を得た。「選手兼チーム営業」の海口らしい、言葉が出た。

「(スポンサーからは)天皇杯、リーグ戦にかかわらず、応援してもらっているけれど、天皇杯は全国的にメディアが取り上げてくれる。よりスポンサーのためになっていると思います。そこで勝つことができなくて、申し訳ない気持ちでいっぱいです」

試合後、スペイン人女性のマルティネス監督からはおのおのに「戦う姿勢を見せられた」という話があった。その姿は見る者に響いた。

次はJ1との距離を縮めて帰ってくる。【松本航】