延長戦の末に敗れた興国の内野智章監督(43)は、ピッチ上に選手を集めて円陣を組んだ。

「こんだけいいチームになっているのに、お前ら、無冠で終わるんか?」

そう訴えかけたという。

前半18分にMF端野(はしの)夏己(3年)が右サイドを破って先制ゴールを挙げる。4分後に同点に追いつかれると、後半は履正社に押し込まれる時間が続いた。

会場はメイン、バック席とも8割方埋まり、9000人の大観衆。指示を出しても、声が届かなかった。

内野監督は振り返る。

「履正社が(途中から)守備を変えてきた中で『変わったらどうするの?』。ベンチからの声が届かない。(DF)常藤のところではまっているのに、ずっと常藤のところに(ボールが)行く。対応力というものが足りなかった。いかにリーダーシップを持った選手がいるかが、カギだった」

PK戦かと思われた試合は、延長後半8分に動く。来季の川崎フロンターレ入りが内定している履正社MF名願斗哉(みょうがん・とうや=3年)に頭で決勝弾を決められた。

同監督は「基本的に仕事はさせていなかったんですけど、名願君にワンチャンスでやられた。代わったばかりのセンターバックが競り負けてしまった」と話した。

多くのJリーガーを輩出する興国を率い、常々「選手権は目指してはいるが、全てではない」と言い続ける。

この日も敗戦直後でさえ、サバサバした様子だった。

「負けるべくして負けた。そういう流れ、運命だった」

DF西川楓人(3年)、MF柳紫温(3年)、MF千葉大舞(2年)、MF宮原勇太(2年)の4人が大会優秀選手に入った。

あと1歩で3大会ぶりの全国は逃したが、これからも個性豊かなタレントを育てていく。【益子浩一】