日本列島がFIFAワールドカップ(W杯)の熱気に包まれる中、55歳の元日本代表FWカズが、5カ国目の海外移籍のために旅立った。

JFL鈴鹿ポイントゲッターズFW三浦知良の来季の所属先に、ポルトガル2部のオリベイレンセが浮上。7日、施設見学と環境チェック、監督らスタッフとの話し合いのためにポルトガルに出発した。

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世界中がW杯でのポルトガルの大勝に酔いしれた数時間後、カズはポルトガルに向けて旅立った。行き先は同国第2の都市、ポルト近郊のオリベイラ・デ・アゼメイス。同市をホームとするオリベイレンセへの移籍準備のためで、新天地の下見を楽しみに笑顔で機上の人となった。

今季プレーしたJFL鈴鹿ポイントゲッターズとの契約は来年1月末まで。その後は、今季同様横浜FCからのレンタル(期限付き移籍)で所属先を探すことになる。カズ自身は「ゆっくり決める」と話してW杯も現地観戦したが、水面下で移籍話は進んでいた。

新スタジアム建設が白紙になるなどJ3昇格のめどがたたない鈴鹿との契約延長は事実上消滅。前日のJFL表彰式では多大な貢献が評価されて特別表彰を受け、加藤桂三理事長からも「来季もJFLでプレーしてほしい」とラブコールを受けていたが、カズの目は海外へと向けられていた。

オリベイレンセは、今年11月に横浜FCを保有するONODERA GROUP(小野寺裕司代表)が経営権を取得したクラブ。今年の創立100周年に合わせて横浜FCと連携し、本格的な強化に乗り出そうとしている。今回のカズ獲得は、ペドロ・ミゲル監督の強い希望もあるという。

今季2部に昇格したチームは現在18チーム中14位。将来的には1部昇格を目指すものの、今季は残留が目標になる。若い選手が多いだけに、クラブ側はカズの経験を評価。プロとしての姿勢を若手に示してほしい意向だ。もちろん、話題性のある選手の加入はチームの活性化にもつながる。

来季J1に復帰する横浜FCも、所属選手の欧州移籍の足がかりとして同クラブを活用していきたいという。小野寺代表は「横浜FCだけでなく、日本の若手選手の欧州への窓口にしたい」と話しており、カズが移籍すれば、両クラブの関係はより強固になる。

カズは「まだ何も決めていない。施設など環境を見ないとね。そこが重要だから」と話すにとどめたが、表情は前向き。「プレーを見たい」と監督から練習参加を要請されたが「オフで体を動かしていないから、今回は断った」と話した。

今回は視察だけで12日からは国内でトレーニングを始める。J3のYS横浜も移籍先の候補にあがるが、視察次第では早期に再渡欧の可能性もある。「言葉は問題ないからね」。55歳での5カ国目の挑戦、カズは待ち遠しそうに笑った。

◆UDオリベイレンセ 1822年にポルトガルのアベイロ県オリベイラ・デ・アゼメイスをホームに創立。サッカーの他にバスケットボールやローラーホッケーなども有する総合型地域スポーツクラブで、ホームスタジアムはエスタディオ・カルロス・オソーリオ(収容4000人)。1940年代に1部リーグの経験があり、11-12年シーズンにはカップ戦(日本の天皇杯)で準決勝に進出している。昨季3部2位で今季2部に復帰した。

◆ポルトガルリーグ 1934年に発足。現在は1部(プリメイラリーガ)、2部各18、3部24チームで構成。W杯日本代表MF守田英正が所属するスポルティングとベンフィカ、ポルトが「3強」と呼ばれ、国内タイトルをほぼ独占。欧州5大リーグ(イングランド、スペイン、イタリア、ドイツ、フランス)に次ぐ実力を誇るが、4番手以下との力の差が大きいことでも知られる。

▽カズの海外挑戦

◆ブラジル 静岡学園高を1年で中退し、1983年(昭58)1月に15歳で渡航。プロの下部組織で成長し、86年にサントスとプロ契約。同年にはパルメイラスと短期契約し、キリン杯にも出場した。キンゼ・デ・ジャウーなどを経て90年に帰国して読売クラブ(V川崎、東京V)入り。

◆イタリア Jリーグ発足の93年にMVPとなり、94年にアジア人初のセリエAプレーヤーとしてジェノアに移籍。ACミランとのリーグ初戦で負傷したが、復帰後のサンプドリア戦で初ゴール。1シーズンでV川崎に復帰した。

◆クロアチア V川崎の経営縮小もあって、98年にクロアチア・ザグレブに移籍。デビュー戦でアシストを決めたがPKを失敗し、その後も不発。チームはリーグ優勝したが、カズ自身は12試合出場0得点で終わり、99年に京都に移籍。

◆オーストラリア 05年に神戸から横浜FCに移籍。同年に横浜FCからシドニーFCに特別枠選手として移籍。リーグ戦4試合で2得点し、年末のクラブW杯に日本人として初めて出場した。大会後には横浜FCに復帰。

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