東山GK佐藤瑞起(3年)は満面の笑みで、3度目の雄たけびを上げた。活躍をたたえる仲間たちが次々に駆け寄った。「PKになってしまったけど、絶対に自分が止めて、決勝に進ませるんだという強い気持ちを持っていた」。守護神の手足が、チームを頂上決戦へと導いた。

準々決勝から2戦連続のPK戦。2人目のシュートを両手で止めると、激しく雄たけびをあげた。4人目は左へ飛び、残った両足で執念のストップ。そして、再びほえた。「学校中のみんなが来てくれて、来てくれたからには絶対勝って、いい思いをさせようと思っていました」。佐藤の一挙手一投足に、スタンドが沸き続けた。

同校初の国立の舞台で緊迫のPK戦。誰も動じなかったのは、どんな場面も想定内だったからだ。普段のPK練習では、福重良一監督(51)が細かくシチュエーションを設定。「今日は『攻め続けたけどゴールを決められなかった試合』のPK戦でやろう」など、試合展開までも想定する。「ずっと、PKは運じゃなくて実力だと言われてきた」と佐藤。どんな状況でも決めて、止める、ぶれないメンタルが、PK戦を制する秘訣(ひけつ)だ。

福重監督は、練習の成果を存分に発揮した選手たちをほめた。「国立という場所は僕自身も緊張しましたし、冷静に平常心で追いついて、2度目のPKも決めた。運も味方につけたと思います」。初の4強、決勝進出と東山の歴史を塗り替えてきた。ここまで来たらあと1勝。佐藤は力強く宣言した。

「僕たちはずっと日本一になるためにやってきた。決勝必ず勝って、日本一になりたい」。たどり着いた頂上決戦でも、喜びの雄たけびを上げたい。【磯綾乃】