高知県勢初となるJリーグ(J3)昇格を目指す日本フットボールリーグ(JFL)の高知ユナイテッドSCが、ついにジャイアントキリングを果たした。最後は1点差に追い上げられたが、自信を持った堅守速攻で逃げ切った。

3カテゴリー上でJ1屈指のタレント軍団、ガンバ大阪から堂々の金星獲得。天皇杯では過去、21年度に徳島ヴォルティス(現J2)、22年度に京都サンガと対戦して敗れていた。三度目の正直で、J1から初勝利をつかんだ。

主将マークを巻いたFW金井冬士(ふゆと、25)は、正確なパスで先制点をアシスト。約10秒のカウンターを演出した。「チームには絶対、相手にやらせないという気迫があった。あこがれの相手、あこがれのピッチ…J1を倒せたし、楽しんでプレーできた」と振り返った。

「高知から本気でJリーグ!」を合言葉に掲げる高知は、16年に誕生したばかり。JFLは参入4年目を迎え、今季はここまで3勝3分け3敗で15チーム中10位で、やや苦戦している。

選手は約30人を保有し、うちプロ契約は5人だけ。その他の選手は午前中にチームで練習し、午後はスポンサー企業などで勤務している。アルバイトで生活する選手もいる。

通常のリーグ戦での勝利給は1万円未満。これはJクラブの何十分の1にも満たない金額だ。

この日、右足の技ありシュートで先制点をマークした新人のFW小林心(こころ、22)は、普段は地元のホームセンターで勤務している。

「J1と対戦できることはなかなかない。その中で結果を残せたのはよかった」。流通経大に在籍した昨年度、Jリーグから声がかからず、オファーのあった高知で新たなスタートを切った。

高知県を本拠地にする以上は、試合では必然的に遠征が多く、東日本へは飛行機を使うものの、静岡や関西、九州へは、バス移動を中心に、時にはフェリーを乗り継ぐ。金井は「しんどいことはしんどいが、それを言い訳にはできない」。金井自身もアマチュア選手で、Jリーグへの移籍を夢見つつ「高知で結果を残したい」と、目の前の試合に集中している。

就任2年目の吉本岳史監督(45)は高知・四万十市生まれ。南宇和、福岡大を経て01年に名古屋グランパスに入団。横浜FCなど、Jクラブで主にDFで活躍した。

戦術眼にたけた指揮官で、普段は3-4-3システムが主体ながら、この日は5-4-1でカウンターを狙い、作戦がはまった。球際でも負けていなかった。

指揮官は「J1のG大阪に勝てて、素直にうれしい。勇気を持ってシュートを打ったのが、得点につながった。体を張って、一番のベースの部分で戦ってくれた。日々、厳しい練習を積み重ねてきたから」と、選手を称賛した。

前監督の西村昭宏ゼネラルマネジャー(64)は、かつてG大阪に強化責任者などで在籍。「早い時間帯に取れた(のが勝因)。G大阪と試合ができて、特別な気持ちはあった。こんな立派なところで試合ができたので」と、感慨深い表情を浮かべていた。

7月12日の3回戦では、横浜FCといわてグルージャ盛岡の勝者と対戦する。横浜FCになれば、吉本監督の古巣対決になる。

 

◆高知ユナイテッドSC 16年2月に高知県初のJリーグ昇格を目指して誕生したクラブ。高知市を中心に同県がホームタウン。四国リーグ優勝を経て、20年からJFLへ昇格。14、13、11位と着実に成績を伸ばし、昨年にJ3ライセンスを取得した。21年12月にはカズ(三浦知良)獲得に動いた経緯もある。選手はアマチュアとプロの混在で、元Jリーグ広島のMF横竹翔(33)らが在籍。