コンサドーレ札幌は今季の前半戦を7勝5分け5敗、暫定8位で折り返した。

総得点38はリーグ最多。元札幌主将で現アカデミーマネジメントチーフを務める石川直樹氏(37)に総括をしてもらった。ペトロビッチ監督(65)体制6年目で見せる成長の1つに、ビルドアップの精度を挙げた。【取材・構成=保坂果那】

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今季の戦いは非常に右肩上がりで、チームとして間違いなく成熟、成長し続けていると感じる。具体的にはGKからつなぐ時のビルドアップで、ほぼミスがなく、必ず相手をはがして、前向きにドリブルやパスでハーフウエーラインを越え、相手のエリアに進入している。そう出来ない時にはスゲさん(GK菅野)から1発で、幅を取ったウイングにしっかりピンポイントでボールをつけられている。ミスが少なくなったから、リズムが崩れない。ノッキング(ズレ)を起こすこともなくなる。自分たちのやりたいサッカーが、どの相手に対しても出来ているのが去年と違うところ。

後ろからのビルドアップをするためには、前の動きも必要。今季はみんなが流動的ではあるけど、必要な場所に立っている。逆足にボールをつけちゃったから半歩遅れるとか、細かいがそういうところが減った。出す場所、受ける場所、みんなが成長している。10日の鳥栖戦もゲームをやっているような感覚だった。ミシャ6年目にして、もう一段階ギアを上げたという印象はある。

(3月12日、2-0で勝利した)横浜戦が分岐点かなと感じる。僕も札幌ドームで観ていたが、おもしろかったし、自信を取り戻せたきっかけになったと思う。僕がいた時からそうだったが、ミシャはマリノス相手に振り切る。アクセルを絶対に緩めない。だから選手が不安に感じる隙がない。真っ向勝負。前半立ち上がりから全員が前に出てボールを奪いに行っていた。コントロールするのかなと思ったら、それを90分やり切ったのはすごい。試合後ミシャに「すごいよ!」と伝えたら、めっちゃうれしそうで、「これくらいやらないと勝てない」と言っていた。選手はすごいキツいと思うけど、でもこれだけやれば勝てると1つつかめたのかな。

今季成長を感じる選手はたくさんいるけど、伸び代だけを見れば、DF中村桐耶。自信を持ってやれている。攻守ともに役割が増えている。鳥栖戦では持ち込んで(逆足の)右足でサイドチェンジする場面があった。ちょっと止められない。彼を見ていたら、サッカーって楽しいものだよねと、すごい子どもたちに夢を与えていると思う。彼絡みの失点はフォーカスされやすいが、伸び代は想像以上。(現役時代は)基本的なことをやらず、叱ることもあった。自分が競る時に「OK」と声を出すとか、本当に基本的なこと。相当うるさく言っていたが、当時から彼は身体能力や推進力で素晴らしいものを持っていた。DFとしてのベースが満たされるようになり、より桐耶の良さが出ている。本人はやっていて、楽しいんじゃないかな。

後半戦もチームとして1点でも多く取って欲しい。だけど負荷が掛かるスタイル。底上げが大事。ポンとチャンスが来た時に、「やってやる」という気持ちが、サブの選手にあるか。後半戦のキープレーヤー、シンデレラボーイが出て来ることを期待している。

 

◆石川直樹(いしかわ・なおき)1985年(昭60)9月13日、千葉県柏市生まれ。04年に柏ユースからトップ昇格。09年7月に札幌へ期限付き移籍。翌年も移籍期間を延長してプレーし、主将も務めた。11年に新潟へ完全移籍。13年から仙台に加入し、17年途中に完全移籍で札幌復帰。180センチのDFとして、J通算330試合(J1=264試合、J2=66試合)14得点(J1=11、J2=3)。20年限りで現役引退した。