昇格レースの行方を占う「静岡ダービー」は清水エスパルスに軍配が上がった。ホームでジュビロ磐田に1-0で完封勝ち。前半、MF乾貴士(35)が挙げた1点をチーム一丸で守り切った。勝ち点1差で追っていた宿敵をねじ伏せ、再びJ1自動昇格圏の2位を奪還。1年でのJ1復帰に大きく前進する価値ある1勝となった。磐田は最後までゴールが遠く、痛恨の敗戦。東京ヴェルディが勝利したため、2位から4位に転落した。藤枝MYFCはV・ファーレン長崎に1ー5で破れた。

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清水の執念が勝った。1点リードの終盤、CKが6本連続で続く絶体絶命のピンチをしのぐと、勝利を告げる笛が鳴った。今季アイスタで最多となる1万8871人が来場したスタンドも歓喜に揺れた。勝利後の「勝ちロコ」にはスタッフやベンチ外メンバーも参加。秋葉忠宏監督(47)は「大声援を送ってくれたサポーターに向かってゴールを決め、後半は声援を背中に受けて体を張った。結果を出してくれた選手は頼もしい」と手放しでたたえた。

均衡を破ったのは、やはり乾だった。前半41分、ゴール前のこぼれ球に反応した。「思い切り打つことだけ考えた」。エリアの外から放った右足ミドルが相手DFに当たってゴールに吸い込まれた。「適当に打っただけ」と試合後は控えめだったが、気持ちがボールに乗り移った値千金の1発。「とにかく勝てたことがよかった」と胸をなで下ろした。

先月30日の藤枝戦は0-2。磐田が勝利したことで2位の座を明け渡した。主将のDF鈴木義宣(31)は「今日の試合に限れば順位なんて関係なかった」。互いにプライドを懸けた一戦での見せ場は少なかったが、勝つことだけに徹した。ダービーは結果が全て。宿敵をねじ伏せ、自力で昇格できる「ポジション」を奪い返した。

今季は練習試合も含めて磐田に1度も負けなかった。残り4試合。乾は「もう2位の位置を譲るつもりはない。全部勝つ」と宣言した。決戦を制した清水が、J1昇格へ1歩前進した。【神谷亮磨】