東京ヴェルディ(J2・3位)が清水エスパルス(同4位)との「オリジナル10」対決を1-1で引き分け、08年シーズン以来、16年ぶりのJ1復帰を果たした。

後半アディショナルタイムにFW染野唯月のPKで追いつき、劇的な形で昇格切符をつかんだ。

今季J2優勝の町田ゼルビアと2位ジュビロ磐田の自動昇格は決定済み。3枠目を争い、Jリーグ創設期からライバルとしてしのぎを削った両クラブによる注目の大一番は、東京・国立競技場で5万3264人の大観衆の中で行われた。

前半から清水がFWカルリーニョス・ジュニオ、MFチアゴ・サンタナ、乾を軸に攻め立てた。対する東京Vは今季リーグ戦で最少失点(42試合で31失点)を誇る堅守で対抗した。

持ち前のハードワークでフリーにさせず、攻められながらもシュートはことごとくゴール枠外へ。また、サイドを崩されても次の選手がいち早く中央を固め、クロスボールに対処し、決定機を与えなかった。0-0で前半を終えた。

後半3分にも右サイドからの鋭いクロスボールをC・ジュニオがヘディングでゴールを狙ったが、ここもDF谷口がしっかり体を寄せてフリーにさせなかったことで、シュートは枠外となった。

後半18分に清水に先制を許した。PKをチアゴ・サンタナが冷静にゴール左へと決めた。

その後も清水にボールを握られ、東京Vは攻め手がない。このまま時間ばかり過ぎ、万事休すかと思われた。だが後半アディショナルタイムにFW染野が倒された。主審はPKを判定。この重圧がかかる中で、染野がPKを決めて1-1の同点とした。土壇場で追いつき、東京Vが来季のJ1参入を勝ち取った。

かつての名門クラブは伝統に奢ることなく変貌した。昨季途中から就任した城福浩監督が「その10センチをどう足を伸ばして防ぐか」と繰り返して浸透させた。押し込まれる場面も多かったが、清水の強力攻撃陣に最後までゴールを割らせなかった。

Jリーグ黎明(れいめい)期にカズやラモスを中心とした攻撃サッカーで、圧倒的な強さと人気を誇った。だがスター選手への高額年俸が経営を圧迫し、98年に読売新聞社が経営から撤退。00年代以降は身の丈に合ったクラブ経営に転じたが、スター選手が去れば勝てなくなり、スポンサーも離れ、負のスパイラルへ。05年と09年に2度のJ2降格が響き、チームは縮小化。慢性的な経営難の中、最大の強みとした育成力で地道に未来につなげてきた。チームの平均年齢は23・6歳。若きチームは体を張り、泥臭く闘い、自分たちのいるべき場所、J1に向けて戦った。

小学生時代に東京Vアカデミー生え抜きのMF森田晃樹主将が牽引したのが象徴的だ。新たな歴史が誕生した。森田が「このチームをJ1に上げた男になりたい」という言葉でスタートさせたシーズンは、最高の形で締めくくられた。

 

※Jリーグ公式サイトには、次のような大会概要の説明がある。

<試合方式および勝敗の決定>

90分間(前後半各45分)の試合を行う。

準決勝、決勝ともに90分で引き分けの場合は、年間順位の優位性を確保するため、リーグ戦年間順位が上位のクラブを勝者とする。 優勝チームは、2024シーズンよりJ1リーグに昇格する。

つまり、引き分けなら、J1切符はヴェルディ。エスパルスは90分で勝ちきるしかなかった。

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