昨季J1王者のヴィッセル神戸が、今季J1に復帰したジュビロ磐田にアウェーで快勝した。

開始直後から積極的な戦いを見せた神戸を、勢いづけたのが前半5分の先制ゴールだった。

DF初瀬亮(26)が蹴った右CKは相手DFにクリアされたが、そこに待ち構えていたのがMF汰木康也(28)だった。前方から落ちてくるボールに合わせて右足を振り抜くと、ボールは元日本代表GK川島永嗣(40)も届かないゴール左隅に決まった。

「枠に飛ばせば何か起こると思ったので、浮かさないようにだけ、強く意識して打ちました。久々のゴールだし、普通の試合と違って難しい開幕戦のあの時間帯で撮れたのは本当に大きかったと思う」

23年4月の横浜F・マリノス戦以来の得点に笑顔を見せた。

17日に川崎フロンターレと戦った富士フイルムスーパーカップでは、メンバー外だったが、吉田孝行監督(46)はこの開幕戦で先発に抜てき。指揮官の「やはり彼がレギュラー争いに加わってこないとチームは活性化しない。『やってくれよ』っていうメッセージも込めて」という期待に、汰木は結果で応えた。

昨季は上位を走るチームの主力としてシーズン序盤から働いたが、夏に左腕部を脱臼して離脱。「そこからおかしくなっていっちゃった」と本人が振り返る通り、負傷の影響から体のバランスを崩した。

その影響はメンタル面にもおよんだ。

「だいぶ(ダメージが)来ちゃいました。(心身)どっちもうまくいかないところがあって、それは今までに経験したことのないものだった」

体の状態を戻すために、体幹を鍛える回数を増やし、オフにも取り組んできた。「本当に悔しい経験だった。あれがあるから今年は去年以上にやならいとっていうモチベーション」と臨んだ成果として、開幕スタメンとゴールという結果をつかんだ。

「体もメンタルも一番良い時に戻せるように準備してきた。100パーセントまではまだ遠いと思うけど、平均ぐらいには戻ったんじゃないかと思う。こういうプレーと結果が出せたのは、1つ自信になるんじゃないかなと思う」。着実な1歩に、背番号14のアタッカーは前を向いた。

汰木が戻るべきと考えているのは、32試合5得点の結果を残した22年の状態だという。「シーズンを通して良かった1年を、今年は超えたいと思っている」。復活を目指す汰木が、その第1歩として最高のスタートを切った。【永田淳】

【動画】神戸汰木康也がダイレクトボレー CKのこぼれ球をエリア外から決めた

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