4月3日の明治安田J1第6節で、横浜F・マリノスと川崎フロンターレの神奈川ダービーが日産スタジアム(午後7時開始)で行われる。リーグの覇権を争うライバル同士。互いのプライドがぶつかり合う序盤の大一番を前に、横浜DF松原健(31)と川崎F・DF大南拓磨(26)が顔を合わせ、ダービーマッチに懸ける意気込みを語った。【取材・構成=佐藤隆志】

■直近7回中6回が両チームV

近年のJ1は神奈川の2強がしのぎを削っている。17、18年と川崎Fが連覇すれば、19年に横浜が優勝。20、21年と再び川崎Fが頂点に君臨すると、翌22年に3連覇を止めたのも横浜だった。直近7年でうち6回は両チームのどちらかがタイトルを手にしている。

この“ビッグ”ダービーについて、松原は「ここ最近は優勝争いを繰り広げているチーム同士で、みなさんの注目度も高いカード。ダービーの重要性を感じているし、両チームのプライドがぶつかり合う戦いになる」と意気込んだ。

昨年の対戦は2月の開幕戦で横浜が2-1と勝利すれば、続く7月の再戦では後半ロスタイムに大南のアシストから決勝点が生まれ、川崎Fが1-0とやり返している。その時の興奮を知る大南は「ダービーだからこそ強い気持ちで、フロンターレ・ファミリーみんなで勝利をつかめるようにしたい」と気持ちを新たにした。

■ブラジル人FWを軸に攻撃力売り

31歳の松原と26歳の大南。世代が異なり、これまで接点はなかったが、ともに世代別代表では主力として活躍。フル代表での出場歴も持ち、クラブを支える看板選手だ。

同じディフェンダー同士。相手の選手像について、松原が「ポリバレントな選手。センターバック、サイドバックとDFラインならどこでも高いクオリティーでプレーできる」と言えば、大南は「足元の技術があり、大事な場面で得点も取れる勝負強い選手」とたたえ合った。今回のダービーでも両選手の活躍が鍵となりそうだ。

両チームはともに攻撃力が売り。横浜はアンデルソン・ロペス、エウベル、ヤン・マテウスという不動のブラジル人アタッカーが前線に並び、途中から出てくる選手も宮市亮、天野純ら個性あふれる実力派ばかり。対する川崎Fも今季3ゴールのエリソン、2ゴールのマルシーニョ、匠の技を持つ家長昭博を軸とした攻撃陣は強力だ。加えて、ともに中盤で援護する選手たちの戦術眼、技術は日本最高レベルにある。

松原は「川崎はすごい強烈な選手がそろっているから1人に的を絞ることができない。そういう選手たちをいかに仕事させないか、チーム全体としてしっかり考えたい」と口にする。

その発言を聞いた大南も「僕らも同じで、全員がハードワークをして違いを出せる選手が横浜には色々とそろっている。特別に誰か1人を見るとやられてしまうので、チームとして対応したい」。そう言った上で「センターバックなので個人的にはアンデルソン・ロペスと対峙(たいじ)すること多くなる。そこを止めたい」と意欲を見せた。

■崎陽軒のシウマイ対川崎大師

横浜と川崎。隣接する大都市同士には異なる文化や習慣がある。サッカーから視点を外し、互いのホームタウンについても語り合った。

それぞれが思う「ご当地自慢」とは? 試合前には必ずウナギを食べるなど、食通の松原は「横浜にはおいしい店が多い」。そう言った上で「横浜と言えば、名物の崎陽軒のシウマイです」。1908年(明41)創業の老舗。17年に横浜に加入して8年目ゆえ、染み付いた生活者視点がにじんだ。

一方の大南は、川崎Fに移籍して2年目と日は浅いが「必勝祈願で毎年お世話になっている川崎大師です」。1128年(大治3)の開創、正月には約300万人が訪れる厄よけで有名な寺社仏閣の名前を口にした。勝負にこだわるプロ選手ゆえの意識が見て取れた。

■球際のぶつかり合いにワクワク

今回のダービーマッチが行われる4月3日は水曜日。集客が下がる平日のナイトゲームとなるだけに、両選手は「ファンの声が僕たちに力を与えてくれる。チャントを聞くとうれしいし、スイッチが入りますね。今日もやってやろうという気分になる」と声をそろえて来場を呼びかけた。

最後に神奈川ダービーの見どころについてたずねると、松原は「マリノスが攻撃するところや、ボールを奪いにいく姿勢だったり。日産スタジアムで守りから攻撃に転じた時のサポーターのみなさんの沸き上がり具合、そういったところを見てもらいたい。例えば、このダービーで初めてサッカーを見る人たちがおもしろいなと思って、また見に来てもらえるような試合展開にしていきたい」。

大南は「やっぱり一番はゴールというのがありますけど、球際であったり、そういうぶつかり合いのシーンで盛り上がっていることが感じられる。相手にも意地があるし、こっちにも意地がある。そういうぶつかり合いがワクワクするところだと思います。そういう局面でしっかりと勝ちたい」。

攻撃力に目が行きがちなカードだが、松原と大南がそれぞれ構成するDFラインがどう相手アタッカーたちを阻んでいくか。ここは矛(ほこ)より盾(たて)にフォーカスして“ビッグ”な神奈川ダービーの行方を見守りたい。

◆松原健(まつばら・けん)1993年(平5)2月16日生まれ、大分県出身。大分U-18から10年にトップ昇格。新潟を経て17年に横浜加入。J1通算217試合9得点。日本代表で国際Aマッチ1試合出場。180センチ、77キロ。

◆大南拓磨(おおみなみ・たくま)1997年(平9)12月13日生まれ、愛知県出身。鹿児島実から16年磐田入団。柏を経て23年から川崎F所属。J1通算138試合5得点。日本代表で国際Aマッチ1試合出場。183センチ、80キロ。