<スルガ杯争奪静岡県サッカー選手権大会権天皇杯県予選:矢崎バレンテ4-2浜松大>◇24日◇草薙球技場◇決勝

 豪雨の中、矢崎バレンテが4-2で浜松大を下し、初の県制覇を果たした。前半10分にDF杉本康介(26)が先制弾を挙げると、エースFW井口大輔(26)が2得点。過去3年連続で敗れていた難敵に後半追い上げられたが、逃げ切った。矢崎バレンテは初の天皇杯出場をかけて、31日の県代表決定戦(午後1時、草薙球技場)でホンダFCと対戦する。

 歓喜の声は、いつまでも絶えなかった。初めて手にした優勝カップ、そして天皇杯出場を懸けた一戦への挑戦権。95年の創部以来、初ずくめの快進撃に、矢崎バレンテの岩科信秀監督(38)は「これだけの点を取ったのはすごい。最後まで集中していたし、選手がよくやりました」と、ねぎらいの言葉をかけ続けた。

 豪雨を蹴散らさんばかりの、怒とうのゴールラッシュだった。前半10分、右CKのこぼれ球を、まずは杉本が豪快に蹴り込んだ。「あまり得点した記憶がない」(杉本)という、累積警告の松尾昌則主将(34)に代わって出たDFの一発で波に乗ると、同20、40分には、東海リーグ得点王の井口がオフサイドぎりぎりを突いて2得点。後半にはFW桜井将人(23)がダメを押して、勝負を決めた。

 選手の“自立”が、勝負を分けた。豪雨で水たまりだらけのピッチ。持ち味のつなぐサッカーをあきらめて「蹴って押し上げ」る予定だった。だが、開始後すぐに「つなげる」と判断し、自分たちで戦術を変えてみせた。そのサッカーで、3年連続で敗れていた浜松大を圧倒。「雰囲気をつくる主将がいない中、どうなるかと見ていたけど、勝ちたい気持ちが出ていた」と、岩科監督は目を細めた。

 31日にホンダFC戦を迎える。選手を大量に送る県国体選抜(成年)が挑んだ練習試合では、2-5で大敗し「本当に何もできず、パンチが効いた」と同代表の井口。だが同時に、相手の戦術も体に覚え込ませてきた。毎日勤務後に行う練習は、長くて1時間。そんな昨年全国社会人2位のチームが、波乱を巻き起こしに行く。【今村健人】