<高校サッカー:日大藤沢2-1静岡学園>◇準々決勝◇5日◇浦和駒場

 4年ぶり11度目出場の静岡学園は日大藤沢(神奈川)に惜敗し、ベスト4進出を逃した。後半29分にセットプレーから先制点を献上。直後にFW本藤風太(3年)の今大会初ゴールで同点としたが、最後は中央を崩されて決勝点を許した。周囲から「史上最弱」と呼ばれ、どん底からはい上がってきたチームは全国舞台で3戦10発と破壊力抜群の攻撃力を披露。攻撃的スタイルを貫いて散った。日本一の夢を託された後輩は悔しさと手応えを胸に出直しを誓った。

 無情な試合終了の笛を聞いた主将のDF石渡旭(3年)はピッチに座り込み、しばらく立ち上がれなかった。GK山ノ井拓己(1年)は泣き崩れた。普段感情を表に出すことが少ない本藤も人目をはばからずに涙を流した。試合内容で圧倒しながらも、勝てなかった悔しさが込み上げてくる。川口修監督(41)は「チャンスはたくさんつくれた。ただ、少し焦りがあったのかもしれない」。試合後は泣きじゃくる選手らの肩をたたき、健闘をたたえた。

 攻めて、攻め抜いて力尽きた。前半からボールを保持し、チャンスと見れば積極的にドリブルを仕掛けた。2、3回戦同様に個人技スタイルで会場を沸かせた。後半29分に右FKから失点したもの、同31分に本藤がゴール前のこぼれ球を押し込んで同点とした。流れを引き戻したかのようにも見えたが、試合終了間際の38分に決勝点を献上した。最後に競り負けた。

 今でこそ一丸となって戦っていたが、チーム崩壊の危機があった。昨年10月。県予選が始まる直前の練習中に衝撃が走った。練習に取り組む姿勢が低かった選手に対し、川口監督が「このままでは絶対に勝てない。メンバーから外す」と怒鳴り散らしたという。さらに、練習を中断して主将を中心に話し合うように命じた。石渡が現メンバーで戦う意向を伝えても、指揮官の意見は変わらない。再びミーティングをして石渡が思いを伝えた。「このメンバーで戦って負けたら悔いはないです」と。

 真剣に意見をぶつけ合った、この時期が転機になった。激戦の県予選を粘り強いサッカーで突破すると、全国初戦では佐賀東に6得点を奪って快勝。続く3回戦は総体Vの東福岡を完膚なきまでにたたきのめし、日本中の高校サッカーファンを驚かせた。本藤は「自分たちがやってきたサッカーは出せた。来年またこの舞台に戻ってきてほしい」と後輩に思いを託して涙をぬぐった。

 チームは2日以上のオフを挟んで、新チームが始動する予定だ。この日はスタメン11人中5人が下級生。全国大会で2得点を挙げたMF旗手怜央(2年)は「この経験を生かして、自分がチームを引っ張っていく」と決意を新たにした。「史上最弱」とまで言われたチームは、どん底からはい上がり全国8強に入った。19年ぶりの全国制覇は果たせなかったが、静学は強く、たくましかった。【神谷亮磨】