桜の葉の華やかな香りと、あんこのおいしそうな香りがただよってきそう…。

W杯前最後の親善試合、日本-カナダ戦前日の16日。アラブ首長国連邦(UAE)ドバイのアルマクトゥームスタジアムのピッチに姿をみせたのは青いサムライブルーではなく、カタールでの練習で着用していた鮮やかな黄色でもなく、珍しい、さくら色とうぐいす色に身を包んだ選手たち。いつもより表情も、柔らかく見える気がした。

「サッカー日本代表スペシャルコレクション」として作られたこのウエア。イメージは、なんと「桜餅」。なぜサッカーと和菓子? そこに込められた甘~い、ではなく熱~い思いを、アディダスジャパンの担当者に聞いた。

担当者 「日本を代表する花として昔から愛されてきた『桜』や、日本の人たちに親しまれてきた『桜餅』にインスピレーションを得て、年齢や性別など、さまざまな垣根を越えて愛されるサッカー日本代表、を表現しています」

手がけたのは、世界的に有名なデザイナーのNIGO■(○の中にR)(ニゴー)氏だ。多様性を大切にする日本サッカー協会と「日本代表を通して、サッカーをより深いカルチャーとして根付かせたい」というアディダスジャパンの願い-。その思いを受け、NIGO■(○の中にR)氏がテーマに選んだのが「桜」と「桜餅」だった。

「桜餅」は、昔から、老若男女に愛されてきた日本の春の象徴でもある。そこから、「誰もが等しくスポーツを楽しむことができる社会の実現を目指す」というメッセージが込められた。今月11日にはイングランドと国際親善試合を行った女子日本代表の「なでしこジャパン」も、同じように、前日の公式練習で着た。

背中にハート形の5枚の花びらでできた桜があしらわれるなど、凝ったデザイン。いつもとひと味違った雰囲気は、選手たちにも好評のよう。「桜餅は日本人にとって親しみがあるものですし、桜は大好きな花なので、とてもすてきなコンセプト。サッカー日本代表の新しいイメージが出来るのが楽しみです」。桜にゆかりのあるC大阪出身のMF南野拓実(モナコ)だ。

このウエアはカナダ戦前日の公式練習限定だったが“桜餅ジャパン”としても? 日本の伝統を受け継いだ試合を見せてくれるはず。おいしく食べられてしまったら困るが、桜のように華やかで、餅のように粘り強いプレーをぜひ、W杯でも味わいたい。【磯綾乃】

◆NIGO(ニゴー) 1970年(昭45)生まれ。若者に人気のカジュアルブランド「A BATHING APE」を立ち上げたファッションデザイナー。04年の米タイム誌では「アジアの英雄20人」に選ばれた。10年にブランド「HUMAN MADE」をスタートさせる。21年にフランスの高級ブランドグループ「モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン」(LVMH)傘下KENZOのアーティスティックディレクターに就任。