サッカー・ワールドカップ(W杯)の開幕を控えた18日(日本時間19日)、開催国のカタール当局がスタジアム内でのアルコール販売を禁止したことが分かった。

米CNNなどが報じている。米大手ビールブランドのバドワイザーは、国際サッカー連盟(FIFA)と1986年以来、長年に渡ってパートナーシップを結んでおり、独占販売権と引き換えに7500万ドルとも言われる巨額の契約を結んでいる。

イスラム教徒が多いカタールでは、アルコールは違法ではないが、一部のホテルなどを除き公共エリアでの飲酒は禁止されている。カタールはFIFAとスポンサーの契約を尊重し、W杯期間中は指定エリアで特定の条件下でアルコール類の提供を認めることを約束していた。

カタールの大会組織委員会は、スタジアム外の「ファンゾーン」でアルコールを提供できるようにするほか、スタジアム内の特定の場所でのビール販売も認めていたが、直前になって方向転換したことは驚きを持って伝えられている。

12年もの準備期間がありながら、直前に一転して禁止したことに批判の声が出ている。一方でノンアルコールビールは、これまで通りスタジアム内での販売が可能だと伝えられている。

FIFAは、カタール当局との間での話し合いの結果、スタジアム内でビールが提供されないことを確認したと述べ、スタジアム周辺のビール販売所が撤去されると発表した。現時点でビールが確実に購入できるのは、ドーハのファンパークだけだと伝えるメディアもあるが、500ミリリットルのグラス1杯が12ポンドという高値になるという。

今大会を巡っては、カタールの女性や同性愛者に対する差別や移民労働者の搾取や虐待など人権侵害に抗議するため、一部ファンが観戦を取りやめる事態となっている。今後は、高額チケットを購入したファンからも、ビール販売禁止で期待していたお祭りの雰囲気が楽しめないと不満や怒りが噴出することは間違いないと伝えられている。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)