サッカーW杯カタール大会で日本がドイツに勝利した1次リーグ初戦を現地で見届けた俳優勝村政信(59)が、代表の進化と躍進を確信した。1泊4日の弾丸観戦から帰国まもなく日刊スポーツの取材に応じ、歴史的一戦を目撃した興奮と芸能界屈指のサッカー愛を伝えながら、森保ジャパンにエールを送った。

◇  ◇  ◇

応援でも着用した日本のユニホーム姿で現れた勝村は、ドーハの空気を確かに持ち帰っていた。「前半(0-1で)終わった時はスタジアム全体が、日本何点取られるんだろう、みたいな雰囲気だったんです。ただ、後半頭から選手交代があって試合がいい感じに動き始めた。ドイツが混乱し始めて。堂安(律)君の1点が入って、会場が一気に爆発しました。FWってすごいな、と」。穏やかながら熱い口調。心地よい疲労感もにじんだ。

後半、森保監督が攻撃要員を次々と投入した勝負手に加え、ドイツ代表ハンジ・フリック監督の采配が戦況を変えたのも、目に見えてわかったという。「日本にとって一番キツかったのがギュンドアンとミュラー(の攻撃)。自由に動かれてイヤな感じだったのに、その2人を変えちゃいましたから。『日本のためにありがとう』って感じでした。日本の采配は全部当たってました。あんな(対照的な)ことなかなかない」と、強豪をのみ込んだW杯の怖さ、面白さを目の当たりにした。

多忙な俳優業の合間の弾丸往復。帰国翌日に復帰したドラマの撮影現場では大歓待を受けたという。「スタッフの態度が違うんですよ。あそこにいたんですね! って。ハリウッドのスターにでもなったみたいな感じでした」と笑い、「あの空間にいたのはやっぱり、特別なことなんだな」としみじみ振り返った。

俳優仲間であり、サッカー仲間の大杉漣さん(18年死去)の写真を手に観戦するのも恒例となった。「海外観戦は一緒に行くようにしてます」。14年ブラジル大会決勝のドイツーアルゼンチン、18年ロシア大会で日本がコロンビアを破った試合に続く、3度目のW杯生観戦。うち2大会連続で日本の歴史的勝利を盟友と目撃し、「勝ってるんです」とおどけた表情で語った。

第2戦前の取材。「まずはコスタリカ戦」と一戦必勝を強調したが、0-1で敗れ、10年大会王者スペインとの次戦が突破への大一番となった。初戦では7得点した強敵だが「そこまで力があるとは思ってない」と、日本に勝機ありと見ている。根拠もサッカー通ならではだ。「スペインもドイツもペップの魔法が解けた状態。その後(クラブ)チームが崩壊している」。バルセロナとバイエルン・ミュンヘン監督として両国代表に影響を与えた名将グアルディオラ監督(愛称ペップ)時代から世代交代し、両国ともに過渡期と分析した。

今後の日本のキーマンにはMF遠藤航をあげた。ブンデスリーガでデュエル(ボールの奪い合い)勝率2年連続トップで、脳振とうから復帰直後ながらフル出場したドイツ戦での活躍を回想し「大きな選手と当たって勝って、チームに勢いがつく」と絶賛した。面識もあるといい、「実際会ったら、自分とそんなに体格が変わらないんです」と驚きもまじえた。

決勝トーナメント進出、日本が目指す初の8強、さらにその先へ、今後もテレビ画面から応援する。「まだ僕らの見たことがない景色を見せてくれるんじゃないかなとは思っています」。ほとぼりは冷めない様子で、最後にあらためてつぶやいた。「『日本人で良かった』って言いまくってます」。【大井義明】

◇  ◇  ◇

○…勝村は約11年続けているテレビ東京のサッカー番組「FOOT×BRAIN」(土曜深夜0時25分)MCとしての取材も兼ねた生観戦だった。日本サッカーの未来をテーマにした、試合や技術論にとどまらないコアな内容で知られる番組。「W杯で日本が優勝するための番組です。優勝した後もドイツ4回とかブラジルの5回に近づけるために番組は進化していきます」とライフワーク化。今大会も随時、W杯情報を提供する。

◇  ◇  ◇

○…日本以外の注目国にはフランスをあげた。FWベンゼマこそ故障で不在だが、エムバペ、グリーズマン、ジルーの前線を高評価。サッカーの最新トレンドについて「戦術を極めたら、昔のイングランドのような前の選手2、3人で完結する、高度に大味なサッカーに戻っている」と分析し「トップの3人が充実しているフランスが一番(頂点に)近いのかな」とした。

◇  ◇  ◇

◆勝村政信(かつむら・まさのぶ) 1963年(昭38)7月21日、埼玉・蕨市生まれ。90年代に日本テレビ系「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」で一躍人気に。ドラマはフジテレビ系「HERO」やテレビ朝日系「ドクターX~外科医・大門未知子~」シリーズなど。映画や舞台も多数。浦和北高サッカー部出身で、社会人チームにも所属。現在もチームを組み週1回ほどプレー。W杯生観戦は3度で、14年ブラジル大会決勝でドイツがアルゼンチンを破った試合が最初。