フランスの10番、FWキリアン・エムバペ(23=パリ・サンジェルマン)の目に涙はなかった。

歓喜に沸くアルゼンチンを、じっと静かに見つめていた。

ヒーローになってもおかしくなかった。チームの全得点を決めたハットトリックの活躍。2点を追う後半35分にPKを決めて1点差に詰め寄ると、そのわずか1分後に鮮やかなボレーシュートで同点に追いついた。

さらに延長戦で再びリードを奪われたが、延長後半13分の土壇場でこの日2度目のPKを決めた。突入したPK戦でも1人目のキッカーを務めて見事成功。しかし、勝利の女神はアルゼンチンにほほ笑んだ。

今大会8ゴールをあげ、得点王に輝いた。表彰台に呼ばれ、金色のスパイクを手にしても、表情は浮かない。史上3カ国目の連覇を逃し、笑顔はなかった。

W杯初出場からの連覇の偉業はならなかった。それでも、怪物の片りんを世界に見せ、2度目のW杯が終わった。