FIFAワールドカップ(W杯)南アフリカ大会以来、12年ぶり通算2回目の優勝を目指すスペインは、今大会ここまでコスタリカ、ドイツとの戦いを終えて1次リーグ1勝1分けの勝ち点4でグループ首位。引き分け以上の結果で自力での決勝トーナメント進出が決まる状況の中、2位につける日本との重要な戦いに挑む。

スペインでは近年、久保建英がメディアを度々にぎわし、昨夏の東京五輪の準決勝での対戦などで日本にスポットライトが当たることがあった。しかし今回は代表レベルでの対戦、W杯という最高の舞台での対戦であり、おそらく日本サッカーがスペイン国内でこんなにも注目を浴びる日はないだろう。

スペインと日本が対戦するのは21年前の親善試合以来、通算2回目となるが、公式戦で顔を合わせるのは初めて。東京五輪のメンバーからスペインでは7人、日本では12人がW杯メンバーに選ばれており、両チームともお互いの戦力をある程度理解した上での対戦となるだろう。

スペインの近年の成績を振り返ると、W杯予選は首位、昨年開催の欧州選手権はベスト4、20-21年シーズンの欧州ネーションズリーグは準優勝。そして今季の欧州ネーションズリーグは1次リーグでポルトガル、スイス、チェコを上回り、2大会連続のファイナルフォー進出決定と、その実力に疑いの余地はない。

コスタリカ戦やドイツ戦でも示したように、スペイン最大の強みは類いまれなボールキープ力だろう。今季のネーションズリーグ1試合平均のボール支配率は68・5%と大会参加54カ国中トップ。さらにパス成功率も90・2%とほとんどミスがなく、パス精度が最も高いチームだった。

一方で以前から続く得点力不足が懸念材料とされている。コスタリカ戦では7得点を奪い世界に衝撃を与えたが、今季のネーションズリーグでは6試合でわずか8得点、1試合平均1・33得点と物足りなさが残った。さらにカウンターやセットプレーの守備で拙さを見せる場面が何度もあったことは、優勝を狙う上で不安要素になり得るかもしれない。

このようなチームと対戦することになる日本について、現地メディアはどのような印象を持っているのだろうか? スペインのラジオ局カデナ・コペでスペイン代表およびレアル・マドリードの番記者を務め、カタールで取材を続けるミゲル・アンヘル・ディアス氏に決戦前日、個人的な意見を聞いてみた。

同記者はまず、「前日会見でルイス・エンリケ監督が言っていたように、日本は骨が折れるチームであり、非常にタフでフィジカルが強く、とても粘り強い。決して諦めることなく、よく走り激しいプレスをかけるチーム。スペインを脅かすことができる危険なチームとなり得る」との印象を述べた。

注目の日本人選手については「私が一番好きな選手であり、最も危険だと思っているのは南野だ。スペインは彼に特に注意を払う必要がある。また鎌田のプレーも気に入っているよ。欧州スーパーカップでレアル・マドリードと対戦した際に決定的チャンスを作っていた。彼のスピーディーなプレーや抜け目なさ、クルトワ相手にあと1歩で得点するところだったのはとても印象に残っている」とスペイン以外でプレーする2人の名を挙げた。

さらにスペイン代表を熟知する同記者に、日本目線で勝ち点3を獲得するためには何をやるべきかを推測してもらった。

「日本がスペインに勝つためには極端に後ろへ引いてはダメだと思う。連係プレーに優れ、壁パスを多用し、非常にクオリティーが高いチームのスペインが、日本の隙間や亀裂を見つけるのは容易なことだ。そのため日本が勝ちに行くなら勇敢にプレーしなければいけないし、何よりもスペインの守備の乱れを突く必要がある。私はスペインの中でDFが最も脆弱(ぜいじゃく)なラインだと思っている」と守備に問題があるためつけ入る隙があるとした。

続けて、「日本は訪れるであろう3、4回のチャンスから得点を決め、スペインを焦らせる必要がある。またスペインは空中戦が日本より強いと思うので、日本は素早くボールを動かし、特に前線の選手のスピードを生かさなければいけない。それがスペインを脅かすための日本の一番の武器になり得ると思う」とカウンターを仕掛けて少ない決定機をものにする必要性を訴えた。

日本にとって厳しい試合になることが予想される中、引き分けで十分ながらも、ルイス・エンリケ監督は全力で「勝ちに行く」と明言。これを受けスペイン紙マルカは試合当日、スペインがローテーションせずに最初2試合同様のベストメンバーで臨む可能性を示唆し、それは日本にとっての「悪いニュース」とした。

さらに日本について「フィジカルとスピードがあり、攻撃面のクオリティーが高い危険なチームだが、集中力と守備が弱点」と分析し、両チームのキーマンとしてペドリと鎌田の名前を挙げていた。

両チームの決勝トーナメント進出をかけた大一番のキックオフまであとわずか。どちらの国にとっても間違いなく大注目の一戦となるだろう。(高橋智行通信員)

スペイン紙マルカがキーマンに挙げた鎌田大地(2022年11月27日撮影)
スペイン紙マルカがキーマンに挙げた鎌田大地(2022年11月27日撮影)