ホームスタジアムのシビタス・メトロポリターノを難攻不落の要塞(ようさい)と化したアトレチコ・マドリードが今季絶好調だ。
チームは29日のスペインリーグ第11節アラベス戦を2-1で勝利し、6連勝と勢いに乗っている。10試合8勝1分け1敗の勝ち点25。悪天でセビリア戦が延期されたことより1試合少ないにも関わらず、バルセロナを抜き3位に浮上している。
■クラブ史上最多連勝記録
またこの日、リーグ戦のホーム連勝数を14に伸ばした。これは11-12年と12-13年のシーズンにかけて達成した、クラブ史上の最高記録に並ぶ偉業であり、12日のビリャレアル戦は、この記録を塗り替える大事な一戦となる。
さらに公式戦15連勝を達成。これはクラブ史上の公式戦最多連勝記録である。ホームで最後に勝ち点を落としたのは、今年2月4日のヘタフェ戦で1-1のドロー。すなわち、シビタス・メトロポリターノで観戦するサポーターは9カ月あまり、チームの勝利する姿しか見ていないことになる。
これに対しシメオネ監督は、「ホームで今起こっている全てにおいて、サポーターの応援が力になっている。選手たちはその力をピッチに反映させている」とアラベス戦後に述べ、毎試合スタジアムを満員にしてくれるサポーターの支えに感謝した。
今でこそ絶好調のAマドリードだが、ほんの1年前は散々な状態であった。昨季の前半戦では公式戦5戦連続で勝てない時期もあり、欧州CLでは1次リーグ最下位で敗退してしまう屈辱を味わった。
しかし、多数の選手を送り出したワールドカップ(W杯)を終え、後半戦が始まると、その敗北はわずか2回のみとなった。
■不協和音の2選手が移籍
チームが徐々に本来の調子を取り戻し始めた要因はいくつかある。
まず冬の移籍市場のタイミングだ。本来Aマドリードは団結力の強いチームであったが、そこで不協和音を生じさせていた、不満分子のジョアン・フェリックスとクーニャがチームを離れたことが大きな要因と考えられた。
さらに、バルセロナとの契約条件により、グリーズマンの出場時間が制限されていた問題や、W杯を制したアルゼンチン代表デ・パウルとAマドリードサポーターとの間にあった確執など、選手個々の抱えていた問題が解消されたことも、チームに良い影響を与えた。
また、Aマドリードのアイデンティティとも言える”堅固な守備”が再び機能し始めたことも大きな要因のひとつだ。FWからDFまで全員が連動する積極的なプレスが功を奏し、失点を抑えることに成功した。
本来の強さを取り戻し始めたAマドリードは今夏、ハビ・ガラン、ソユング、アスピリクエタを獲得し、サムエウ・リーノとリケルメが期限付き移籍から復帰した。一方、退団を希望したジョアン・フェリックスや、サウジアラビア行きを選択したカラスコなどがチームを離れている。
■シメオネ監督の采配の妙
昨季のメンバーをベースに、シメオネ監督は今季も3-5-2で臨んでいる。カラスコが抜けた左ウイングバックは、サムエウ・リーノとリケルメが攻撃的な役割を果たし、うまくカバーしている。戦力的な上積みはあまりないものの、チームが一丸となった昨季の勢いをうまく維持できている。
直近のアラベス戦でレマル、サムエウ・リーノ、デパイ、ヘイニウドが欠場したように慢性的に多くのけが人を抱えており、頻繁に選手を入れ替えることで対策しているが、シメオネ監督がうまく指揮をとり、攻守ともにうまく機能しているのが、今のAマドリードの強みだ。中でも今季無敗で首位だったレアル・マドリードを3-1で粉砕したダービーマッチの出来はすばらしく、圧巻の一言に尽きる。
■2トップは最強の破壊力
リーグ戦の総得点は25。23得点のレアル・マドリードとバルセロナを抑え、ジローナと並びトップとなっている。この好調ぶりを支えているのは、現在スペインリーグで最も破壊力のある2トップだ。
1人は、昨季のリーグMVPの呼び声高かったグリーズマン。豊富な運動量でピッチ全体を幅広く動き回り、ゲームメイクもこなしながらゴールを量産している。ここまで全10試合に出場し7ゴールと、得点ランキングでベリンガム(Rマドリード)に次ぐ2位につけている。その安定したパフォーマンスで、幾度となくAマドリードを救っている。
もう1人は、例年以上にゴール前で自信に溢れたプレーを見せ、クラブでも代表でも冷静にゴールネットを揺らしているモラタだ。リーグ戦の成績は9試合6得点1アシストで、得点ランキングで3位につけている。
昨季控えに甘んじていたサウールが本来の力を取り戻したことも、チームの助けとなっている。左インサイドハーフとしてレギュラーの座を勝ち取り、ここまで10試合に出場し、リーグ戦最多の5アシストを記録している。
さらに、守護神オブラクを中心に鉄壁の守備陣を築き、総失点9と、Rマドリード(8失点)に次いで2番目に少ない。けがの多いヒメネスのコンディションは気になるが、シメオネは本来MFのヴィツェルや右サイドバックのアスピリクエタをセンターバックに配置しすることで、うまく対処している。
■欧州CLはアウェー苦戦
一方、毎試合、日本人選手が所属するチームと対戦している欧州CLはここまで、アウェーでやや苦戦中。1次リーグE組3試合を終え、1勝2分けの勝ち点5で2位につけている。昨季の失態を払拭し、決勝トーナメントに進出するためにも、残り3試合をうまく乗り切る必要があるだろう。
Aマドリードの今季の目標は3季ぶり12回目のリーグ優勝だ。さらに近年稀に見るこの好調ぶりを維持できた場合、非常に難しいとは思うが、シメオネ監督が2回決勝まで行くも届かなかった、欧州CL初制覇も視野に入ってくるかもしれない。【高橋智行通信員】(スペイン発サッカー紀行/ニッカンスポーツコム・コラム)


