ブンデスリーガの名門シュツットガルトに所属する日本代表主将のMF遠藤航(30)が、プレミアリーグの強豪リバプールに完全移籍することになった。その舞台裏には何が? 調子が上がらぬチーム事情から紐解いてみた。

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リバプールは昨季、マンチェスター・シティーと並ぶ優勝候補と言われながら、期待外れの5位に終わった。その要因として挙げられたのがMF陣の層の薄さだ。

主将のヘンダーソンはベテランの域に差しかかり、技巧派チアゴはケガもあり18試合の出場にとどまった。世代別スペイン代表期待の星バイチェティッチはまだ18歳。エリオットも4月に20歳になったばかりで経験が不足していた。

そのためリバプールの今夏の補強は中盤の選手を軸に行われた。ヘンダーソンは中東へ去り、ミルナー、オクスレードチェンバレン、ケイタも退団した。だがそれを補って余りあるMFたちを獲得した。

ブライトンから22年ワールドカップ(W杯)カタール大会で優勝したアルゼンチン代表のメンバーでもあるマクアリスターを獲得。ライプチヒからはハンガリー代表ソボスライを加えた。2人の攻撃力は絶大で、リバプールの中盤は一気にリーグ屈指のものになった、と思われた。

クロップ監督の構想が崩れたのが、同監督が「守備的MFでは世界トップの1人」とたたえるブラジル代表MFファビーニョが今夏のトレンドの中でサウジアラビア1部アルイテハドに移籍してしまったこと。これでアンカーのポジションにポッカリ穴が開いてしまった。

ファビーニョの穴埋め役ができるはずだったカイセド(ブライトン)は獲得でクラブ間合意していたにもかかわらず、チェルシーにさらわれ、もう1人のターゲット、ラビア(サウサンプトン)もチェルシーに奪われる寸前となっている。そのためファビーニョの代役候補の確保が急務となっていたのだ。

リバプールは“憎き”チェルシーとの開幕戦を1-1で引き分けた。この日はマクアリスターがアンカーの位置に入ったが、守備の強度はいまひとつで、特長である攻撃センスも発揮することはできなかった。逆に相手のアルゼンチン代表MFフェルナンデスに中盤を支配され、セカンドボールはことごとく奪われた。

対人に強く、ボール奪取能力にたけた遠藤がリバプールに加われば、ファビーニョの抜けた穴を埋めることができる。また、それだけでなくソボスライ、マクアリスターの攻撃力がより生かせる布陣を敷くことが可能になる。これがクロップ監督が描く構想だ。【千葉修宏】