「ラッキーって感じです。後半は誰もこなかったので。このままいけるかな~って。実感がないですね。タイムもタイムですし」。6月の日本選手権で出した自己記録を0秒11下回り、決勝進出者では最も遅いタイム(20秒43)にはやや不満げだったが、世界にとどろく偉業には違いない。100メートル、200メートル世界記録保持者のボルトが持つ、この種目の最年少での決勝進出記録を更新。「え? そうなんですか?」と驚きの表情だったが、すぐに真顔になった。「(決勝に)最年少で出たところで戦えないと意味がない」。

 ボルトの200メートルの大会記録を塗り替えた15年の世界ユース選手権に続く“ボルト超え”となった。担当する五味トレーナーは末恐ろしい18歳のスピードの秘訣(ひけつ)について、ある特徴を指摘する。「骨盤が前傾しているんです」。それにより関節周辺の前側にある腸腰筋が発達しやすく、足のパワーを前方に伝えやすいという。「臀部(でんぶ)周り、ハムストリングの発達の仕方もすごい。エネルギーを作り出す中心部分は発達しているが、ふくらはぎなど末端部分は筋肉量が多いわけでなく力を伝えるだけ」。天性の骨格と理想的な筋肉が融合し、爆発力の源になっている。

 東京・城西高時代から「世界最速」を目指すと公言してきた。15年世界ユース選手権では2冠。今年から海外に拠点を置いて走りを見直し、日本の史上最年少代表として出場した2年前の北京大会で阻まれた準決勝の壁を越えた。憧れ続けたボルトに直に挑む機会はなかったが“ボルト超え”を果たした18歳は、今や世界から注視されるスプリンターとなった。【上田悠太】