陸上の日本学生対校選手権男子100メートルで、日本人で初めて10秒の壁を破る9秒98をマークした桐生祥秀(21=東洋大)が快挙から一夜明けた10日、福井県営陸上競技場で報道陣の取材に応じ「テレビや新聞の記事を見て(9秒台を)出したんだなという実感が湧いてきた」と改めて喜びを語った。

 携帯電話には400件以上のお祝いの言葉が届き、長年、9秒台一番乗りを争ってきた山県亮太(25=セイコーホールディングス)からも「おめでとう」とメッセージをもらったという。ライバルの祝福に「感動して泣きそうになった」とうれしそうに話した。

 土江寛裕コーチ(43)は前夜、祝杯を挙げたそうで「寝られなかった。少しずつかみしめている」としみじみと話した。歴史を塗り替えたレースの映像も確認し「全体としてはゆったり見える走りだった。(左脚に不安があり)完璧な準備をしてこなかったことが、逆にプラスに働いたのかな」と振り返った。

 桐生は脚の状態や体調を考慮し、この日の200メートル準決勝を棄権。次は10月の愛媛国体の400メートルリレーに出場する予定だ。3年後には東京五輪も控える。「伸びしろは自分でも想像がつかないくらいあると思う。さらに(記録を)更新したい」と宣言した。