ダイヤモンドリーグ唯一のアフリカ開催の大会。絶好調のノア・ライルズ(20=米国)らが出場する男子100メートルが、“ポスト・ボルト”争いのレースとして注目される。また、女子走り高跳びで45連勝中のマリア・ラシツケネ(25=ロシア/個人参加)ら、昨年のロンドン世界陸上金メダリスト6人がエントリーした。日本からは男子100メートルに桐生祥秀(22=日本生命)、女子5000メートルに鍋島莉奈(24=JP日本郵政グループ)の2人が出場する。

 男子100メートルは米国勢3選手が優勝候補。9秒88の今季世界最高で並ぶライルズとロニー・ベイカー(24)、昨年のロンドン世界陸上銀メダルのクリスチャン・コールマン(22)に9秒8台前半が期待できる。

 今季の充実ぶりではライルズが一番だろう。全米選手権100メートルを制し、19秒69の今季世界最高を出している200メートルでダイヤモンドリーグに3連勝している。

 ベイカーも負けていない。全米選手権こそ0・02秒差でライルズに敗れたが、ダイヤモンドリーグの100メートルは3勝しているのだ。

 コールマンは3月の世界室内60メートルで優勝。2月の全米室内優勝時には6秒34の室内世界新を叩き出した。自己記録の9秒82は昨年出したものだが参加選手中一番だ。

 ライルズは200メートル出場が多く、コールマンは全米選手権を欠場するなど出場試合数を絞っているため、3人が同じ100メートルを走るのはラバト大会が初めて。その点でも注目が集まる。

 桐生は昨年日本人初の9秒台となる9秒98をマークしたが、今年6月の日本選手権100メートルは3位と敗れた。昨年のロンドン世界陸上に続きアジア大会も個人種目代表を逃し、記録的にも10秒15がシーズンベストにとどまっている。

 だが、きっかけさえつかめば一気に記録を伸ばせる感触がある。今季最も強い選手たちとのレースとなるラバト大会で、桐生のスイッチが入る可能性はある。日本人2度目の9秒台を出し、世界と勝負するレースとしたい。

 鍋島が出場する女子5000メートルも豪華メンバーだ。ロンドン世界陸上金メダリストのヘレン・オビリ(28=ケニア)や、1500メートル世界記録保持者のゲンゼベ・ディババ(27=エチオピア)らがエントリーしている。

 鍋島は5月に4大会5レースを連戦し、そのうち3レースで自己新をマーク。5月最終戦のダイヤモンドリーグ・ユージーン大会では15分10秒91の自己新で9位と健闘した。

 6月の日本選手権に2連勝し、昨年のロンドン世界陸上に続いてアジア大会代表入りを決めた。今季を「ステージをワンランクアップさせるシーズン」(高橋昌彦監督)と位置づけ、ラバト大会に挑戦する。

 ユージーンでもディババ、オビリが出場していたが、鍋島は優勝したディババとは54秒差をつけられた。

 鍋島も桐生も、世界との差を縮める大会としたい。

 ◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する単日、または2日間開催では最高カテゴリーの競技会シリーズ。2010年に発足し、一昨年までは年間総合ポイントで各種目のツアーチャンピオンを決定していた。昨年からシステムが変更され、ファイナル大会出場者を決めるクオリファイリング大会として12大会を実施し、16種目ずつを行うファイナル2大会の優勝者がダイヤモンドリーグ優勝者となるチャンピオンシップ形式になった。各クオリファイリング大会の種目別賞金は3万ドル(1位1万ドル~8位1000ドル)で、各種目は年間4~6大会で実施される。各大会のポイント(1位8点~8位1点)合計上位8人(種目によっては12人)がファイナル大会に進出。ファイナル大会の種目別賞金は10万ドル(1位5万ドル~8位2000ドル)で、年間優勝者には賞金5万ドルとダイヤモンド入りトロフィーが贈呈されるのに加え、来年の世界陸上への出場権が得られる。出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝で行われるため、緊張感あるレースがスピーディーに続く。また、オリンピックや世界陸上のように1種目3人という国毎の出場人数制限がないため、ジャマイカ、アメリカ勢が揃う短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目など、五輪&世界陸上よりレベルが高くなるケースもある。