2018年のダイヤモンドリーグも残り3戦。8月30日のチューリッヒ大会と同31日のブリュッセル大会は全種目の最終戦が2大会にわけて実施され、今シーズンのダイヤモンドリーグ・チャンピオンが決定する大会だ。

 バーミンガム大会が通常戦としては最後のダイヤモンドリーグとなる。盛り上がりそうなのが女子200メートルで、地元の新鋭選手と昨年の世界陸上メダリストたちと対決する。男子走り高跳びでは戸邊直人(26=つくばツインピークス)が上位を狙う。

 8月上旬に行われたヨーロッパ選手権で話題を集めたのが、ディーナ・アッシャー・スミス(22=英国)のブレイクだ。女子100メートルと200メートルの個人種目2冠を、10秒85と21秒89のダブル今季世界最高で達成した。

 メイン種目の200メートルは15年の22秒07が自己記録だった。同年の北京世界陸上と16年のリオ五輪は連続5位、昨年のロンドン世界陸上は4位でメダルに届かなかった選手である。

 今季は100メートルで10秒9台を2度マークし、ダイヤモンドリーグでは6位・2位・1位と順位を上げた。スピード強化がヨーロッパ選手権の快走につながった。

 今季前半は200メートルにあまり出ていなかっただけに、今大会でさらに記録を縮める可能性がある。

 そのアッシャー・スミスの快進撃を止めようと、昨年の世界陸上メダリスト全員が出場する。

 金メダルのダフネ・シュキッパーズ(26=オランダ)は21秒63のヨーロッパ記録(世界歴代3位)保持者。ヨーロッパ選手権では0・25秒差の2位だったが、雪辱を期しているはずだ。

 銀メダリストのマリー・ジョゼ・タルー(29=コートジボワール)は、昨年の世界陸上は100メートルでも銀メダルを獲得した。今季も100メートルで活躍し、シーズンベストは10秒85とアッシャー・スミスと同タイム。ダイヤモンドリーグでは出場した4試合全てに勝っている。

 そして世界陸上銅メダルのショーネー・ミラー・ウイボ(24=バハマ)は、2年前のリオ五輪は400メートル金メダリスト。200メートルでも21秒88とアッシャー・スミスを上回っている。

 勢いで勝るアッシャー・スミスがメダリスト3人を抑えるのか、実績のある3人がメダリストの意地を見せるのか。バーミンガムで一番の注目を集めそうだ。

 戸邊は7月に2メートル32の国外日本最高をイタリアで跳び、日本記録にも1センチと迫った。その記録で出場が認められた9日後のダイヤモンドリーグ・モナコ大会では2メートル27で4位。モナコで獲得したダイヤモンドリーグ・ポイントは5点で、現時点でも年間順位で12位につけている。

 バーミンガムは今月末のアジア大会に向けての最終調整試合という位置づけだが、2メートル33の日本記録更新も十分期待できそうだ。

 この種目では2メートル40を跳んでいる2選手が、ケガとドーピング違反で今シーズン後半は出場していない。バーミンガム大会はマテウス・プルジビルコ(26=ドイツ)が自己記録、シーズンベストとも2メートル35で参加選手中トップ。

 ヨーロッパ選手権優勝と勢いに乗るが、戸邊との記録差は3センチ。2人は昨年2月に室内の試合で直接対決があり、そのときもプルジビルコが2センチ差で勝っているが決定的な差ではない。

 戸邊が優勝争いに絡む可能性は十分ある。バーミンガムの好成績で、アジア大会金メダルへ弾みをつけたい。

 

 ◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する単日、または2日間開催では最高カテゴリーの競技会シリーズ。2010年に発足し、一昨年までは年間総合ポイントで各種目のツアーチャンピオンを決定していた。昨年からシステムが変更され、ファイナル大会出場者を決めるクオリファイリング大会として12大会を実施し、16種目ずつを行うファイナル2大会の優勝者がダイヤモンドリーグ優勝者となるチャンピオンシップ形式になった。各クオリファイリング大会の種目別賞金は3万ドル(1位1万ドル~8位1000ドル)で、各種目は年間4~6大会で実施される。各大会のポイント(1位8点~8位1点)合計上位8人(種目によっては12人)がファイナル大会に進出。ファイナル大会の種目別賞金は10万ドル(1位5万ドル~8位2000ドル)で、年間優勝者には賞金5万ドルとダイヤモンド入りトロフィーが贈呈されるのに加え、来年の世界陸上への出場権が得られる。出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝で行われるため、緊張感あるレースがスピーディーに続く。また、オリンピックや世界陸上のように1種目3人という国毎の出場人数制限がないため、ジャマイカ、アメリカ勢が揃う短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目など、五輪&世界陸上よりレベルが高くなるケースもある。