男子200メートルのノア・ライルズ(21=米国)ら昨年のダイヤモンドリーグ・チャンピオンが11人もエントリーした。五輪&世界陸上が行われなかった昨シーズンの世界一と言っていいメンバーだ。彼らに挑むのが先月のゴールデングランプリ(大阪・長居)で日本を沸かせた選手たち。男子200メートルのマイケル・ノーマン(21=米国)、走り高跳びの戸辺直人(27=JAL)、三段跳びのオマー・クラドック(28=米国)らが、世界のトップとどんな勝負をするか。

日本からは男子400メートル障害に安部孝駿(27=ヤマダ電機)、男子走り高跳びには衛藤昂(28=味の素AGF)も出場する。

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 ライルズとノーマンの200メートルでの対決は興味深い。ライルズは5月に100メートルで9秒86、ノーマンは4月に400メートルで43秒45と、種目は異なるが今季世界最高をともにマークしている。

2人は同じ97年生まれ。16年のU20世界陸上ではライルズが100メートルで、ノーマンが200メートルで優勝している。

ゴールデングランプリで来日時にライルズとの関係を問われたノーマンは、「友情を持ったライバルです」と答え、以下のように続けた。

「次はローマの200メートルで対決するので、それまでに自分のレース運びを完成させたいと思っています。200メートルでは3回一緒に走ってすべて負けています。次は絶対に勝ちたい」

ライルズはショートスプリンターだがスタートは得意ではなく、後半のスピードで勝負する。それに対してノーマンはロングスプリンターだが、ゴールデングランプリなどを見ると前半が速い。大きなストライドのノーマンを、速いピッチのライルズがホームストレートで追い上げる展開になるかもしれない。

17年世界陸上金メダリストのラミル・グリエフ(29=トルコ)、銀メダルのジェリーム・リチャーズ(25=トリニダードトバゴ)も出場する。米国勢のマッチレースにはならないが、ライルズとノーマンが9月開幕の世界陸上ドーハ短距離3種目で大活躍するのは間違いない。注目しておくべき2人だろう。

 

戸辺と衛藤が出場する走り高跳びの今季世界最高は、意外にも2メートル31にとどまっている。2月に2メートル35の室内今季世界最高を跳んだ戸辺、5月に2メートル30に成功した衛藤も優勝争いに加わることができる状況だ。

2メートル42の世界歴代3位を持つボーダン・ボンダレンコ(29=ウクライナ)をはじめ、2メートル39以上の記録を持つ選手が3人出場するが、その3人も故障上がりなどで万全の状態ではない。

むしろ自己記録はともに2メートル36だが、昨年のダイヤモンドリーグ・チャンピオンのブランドン・スターク(25=豪州)や、17年世界陸上銅メダルのマハド・エディン・ガゼル(32=シリア)らが難敵になりそうだ。

戸辺、衛藤ともすでに世界陸上標準記録はクリアしているので、6月の日本選手権の結果で世界陸上代表入りできる。ローマでは世界陸上本番を見据えた戦いをするはずだ。

◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する単日、または2日間開催では最高カテゴリーの競技会シリーズ。2010年に発足し、2016年までは年間総合ポイントで各種目のツアーチャンピオンを決定していた。2017年からシステムが変更され、ファイナル大会出場者を決めるクオリファイリング大会として12大会を実施し、16種目ずつを行うファイナル2大会の優勝者がダイヤモンドリーグ(年間)優勝者となるチャンピオンシップ形式になった。各クオリファイリング大会の種目別賞金は3万ドル(1位1万ドル~8位1000ドル)で、各種目は年間4~6大会で実施される。各大会のポイント(1位8点~8位1点)合計の上位選手がファイナル大会に進出(種目によって異なり7人または8人、または12人)。ファイナル大会の種目別賞金は10万ドル(1位5万ドル~8位2000ドル)で、年間優勝者には賞金5万ドルとダイヤモンド入りトロフィーが贈呈されるのに加え、今年9月開幕の世界陸上への出場権が与えられる。ほとんどの種目が予選なしの一発決勝で行われるため、緊張感あるレースがスピーディーに続く。また、オリンピックや世界陸上のように1種目3人という国毎の出場人数制限がないため、ジャマイカ、アメリカ勢が揃う短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目など、五輪&世界陸上よりレベルが高くなるケースもある。