サニブラウンは、スタートでかなり反応が悪くなってしまった。私の時代は屋外試合で電子音のスタートはあまりなかったが、何人か号砲が聞こえづらい選手がいたようで、不幸が重なった。

予選と同じスタートならば余裕を持って2位以内の着順で決勝に残れただろう。スタートで出遅れると、慌てて追いかけるところだが、中盤以降は素晴らしい動きだった。動きの正確さを保ち、後半のスピード低下も防いだ。予選の力の抜き具合を考えると、決勝にピークを合わせていただろう。アンラッキーな結果だったが、東京オリンピック(五輪)で決勝のスタートラインに立つ場面が浮かぶような中盤以降の走りだった。リレーでもかなりの爆発力を期待できる中盤の動きだった。

小池は、テレビ画面を見て、スタート前に少し揺れるような感じの動作があった。そのまま出るか、動きを止めるか、迷いが感じられた。大会1本目の予選が10秒21。これが自己ベスト(9秒98)から0秒10以内で収まるような走りならばよかったのだが。やはり初戦の入り方は重要だ。

桐生は今、彼がやれること、トレーニングでしてきたことが出せた。昨年までは先頭で60メートル付近にいくとかなり力が入って、足の回転を制御できなかった。今回は脚筋力がついてきて、スピード低下を最低限に抑えられた。大きな試合で自分のパフォーマンスを出せて手応えをつかんだろう。気持ちを落ち着かせて、リレーの3走のような走りを出していければいい。(男子100メートル元日本記録保持者)