筑波大が長く閉ざされていた扉をこじ開けた。

10時間53分18秒の6位で上位10位以内に入り、94年以来26年ぶり63度目の箱根路の切符を手にした。1位の東京国際大など上位10校が来年1月2、3日に行われる本大会の出場権を獲得。総合優勝3度の山梨学院大は17位に沈み、連続出場が33大会で途絶えた。

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まだ早大、中大、日大と常連校も残っていた。運命の結果発表。静寂の空間には期待感にも満ちていた。「6位筑波大学」。26年ぶりの箱根路を告げるコールが響いた。筑波大の選手たちは歓喜し、次々と抱擁した。涙する者もいた。

医学群5年で先週まで泌尿器科で病院実習をしながら、チーム5位の成績だった川瀬は「ビッグコンテンツに国立大が挑戦できることは誇りに思う」と胸を張った。00年シドニー五輪女子1万メートル代表の妻晴美さんのコーチとして知られ、15年春から指導をする弘山勉監督は「練習はできていた。素晴らしい学生に会えて幸せ」と万感だった。

国立ゆえの障壁も越えた。大学からの強化費は「0円」。弘山監督は就任2年目からクラウドファンディングで年間約300万円の強化費を集めた。合宿に以前は不在だったトレーナーが同行できるようにした。練習の質は向上し、故障も減った。またチームには「強豪校ではない」という甘い雰囲気もあった。転機は全日本大学駅伝予選会の出場を逃した7月。選手で話し合い、箱根を本気で目指す意志のない選手約10人を練習から外した。その大なたは「本気で箱根を目指す」という強豪さながらの空気を醸成した。甘えは消えた。

前身の東京高等師範学校の先輩で、NHK大河ドラマ「いだてん」の題材となった金栗四三の魂を受け継いだ。「いだてん」が始まった縁で、9月に新しく熊本に後援会が発足。その支援を受け、新たに熊本合宿を行った。練習を積むだけでなく金栗の家、墓、記念館などゆかりの地も巡った。日本人初のオリンピアン、その功績を胸に刻み日々の糧に変えた。3年で駅伝主将を務める大土手は「いだてん効果で注目度が上がっていた。それを追い風にできた」と語る。

東京高等師範学校が第1回箱根駅伝で総合優勝してから100年の節目で迎える本大会だ。弘山監督は「出るからにはシード権を取りたい」。古豪復活の幕開けとする。【上田悠太】