伝説の職人による微調整も力に、2時間22分22秒の壁を突破する。東京オリンピック(五輪)女子代表残り1枠の代表枠が懸かる大阪国際女子マラソンを翌日に控えた25日、松田瑞生(24=ダイハツ)のもとに、新たなレース用シューズが届いた。

それは有森裕子、高橋尚子、野口みずきら日本マラソンを作った多くのランナーを担当した三村仁司氏が作ったニューバランスのもの。23日にフィッティングした際、わずかに「きつい」と感じたという。もうレースは3日後に迫っていた中、ゆとりがある精緻にカスタマイズされた新シューズを作ってもらった。これで勝負の後半で足が膨張しても、力を最大限発揮できる。大阪市内で最終調整した松田は「やることはやった。最後までやり切ろうかという感じ」と意気込んだ。

松田の足には大きな特徴がある。両足とも親指の付け根が人さし指側に「く」の字に曲がっている外反母趾(ぼし)。だから松田のシューズは、親指の付け根部分が大きく外に突き出ている。既製品ではサイズが合わず、とても走れない。オーダーメードにこだわる三村氏のシューズを大阪薫英女学院高1年の冬から愛用する。その時から続く長い縁だ。4位に終わったMGC以降、精神的に落ち込んだ時期もあったが、三村氏から何度も励まされた。「次がまだある。諦めたらあかんぞ」。レース当日には足にテーピングもしてもらう予定だ。「既読を付けて(ラインの会話が)終わっても、連絡がめっちゃきます。三村さんの愛が伝わりすぎます」と笑う。ナイキの厚底シューズに注目が集まっている昨今。新相棒を装着し、東京五輪代表権を得る条件となる2時間22分22秒以内の日本人最速タイムを出すことが、最大の恩返しになる。

足だけでなく、ネイルも負け知らずの必勝カラーだ。爪先は赤、黄色、緑などカラフルに彩られる。このネイルは連覇した17、18年日本選手権1万メートルの時と同じ。過去2戦2勝という最高の験担ぎだ。MGCでは爪をゴールドにしていたが「あれはよくなかった。狙いすぎました」と苦笑い。心機一転で、地元・大阪を駆け抜ける。