駒大の田沢廉(3年)が、「花の2区」で学生最強を証明した。歴代4位の1時間6分13秒の快走で自身初の区間賞に輝いた。

【箱根駅伝往路】各区間詳細>>

駒大の選手が2区で区間賞を獲得するのは、現役時代の大八木弘明監督(63)が走った86年以来36年ぶり。師弟の絆で、他大のエースも留学生も寄せ付けない走りっぷり。目指す世界の舞台にも弾みをつけた。

   ◇   ◇   ◇

激走を終えて道路に倒れ込んだ田沢が、むくっと起き上がった。右手を上げて頭を下げた先は、大八木監督が乗る運営管理車。

「ごくろうさん! ありがとう!」

聞き慣れた張りのある声が昨年よりも胸にしみた。

追い風に乗って走りだすと、鶴見中継所での39秒差をすぐに逆転した。7キロを過ぎたあたりで中大を抜き首位に。そこからは自分との闘い。最強留学生の東京国際大・ヴィンセントも、オリンピアンの順大・三浦も、誰の姿もなかった。「残りの3キロがきつすぎて。1人で区間新記録出したら、とんでもないと思うくらい」。励みになったのは、後ろから聞こえてくる声だった。

「お前いいよ、乗ってるよ!」。いつもより、楽しげな言葉に乗せられた。「去年見ると分かるとおり『男だろ!』『ぶっ倒れても良いから、やれ!』と結構キツい言葉なんですけど。今回はおっとりしたこと言ってくれて」。苦しい表情を浮かべながらも、成し遂げたエースの仕事。駒大の選手が2区区間賞を獲得するのは、現役時代の大八木監督以来36年ぶりだった。

箱根路へ向かう3日前のこと。「俺取ったんだよ~」。指揮官はさりげなく、自身の栄冠を話題に出した。「じゃあ、その座は取んないでおきますよ」。どこか誇らしげな様子に、田沢は冗談交じりに“応戦”。「それ以来ということは知らなかった。うれしいです」。師弟の間に記録のたすきがつながった。

中学生の時からあこがれた駒大で、田沢はめきめきと成長を遂げた。「世界と戦いたいです」。熱意を伝えると、大八木監督は「俺もだ」と同じ熱量で応えてくれた。「世界で結果を残してこそ自分が満足できる。ここが終わりじゃなくて、通過ライン。今年は自分がワンランク上にいける年になるような気がします」。見据えるのは最高峰の舞台。熱い師匠とともに世界へ羽ばたく。【磯綾乃】

◆田沢廉(たざわ・れん)2000年(平12)11月11日生まれ、青森・八戸市出身。是川中、青森山田を経て駒大に進学。全国高校総体5000メートルで17年は9位、18年は7位。昨年12月には、1万メートルで日本歴代2位となる27分23秒44をマーク。箱根駅伝は1年時に3区で区間3位、2年時に2区で区間7位。180センチ、61キロ。