陸上男子100メートルで世界歴代2位タイの9秒69の記録を持つタイソン・ゲイ(米国)と前世界記録保持者のアサファ・パウエル(ジャマイカ)が、ドーピング検査で陽性反応を示した。8月の世界選手権(モスクワ)を前に、トップ選手の相次ぐ違反発覚が短距離界に暗い影を落とした。

 30歳のゲイは100メートルで今季2度の9秒7台を記録し、6月の全米選手権では200メートルとの2冠を達成した。世界選手権でウサイン・ボルト(ジャマイカ)を脅かす存在と見られていたが、両者の対決はなくなった。

 AP通信によると、ドーピング撲滅に積極的だったゲイは、電話会見で「詳細は明かせないが、信頼していた人物に裏切られた」と涙声で訴えた。米国反ドーピング機関(USADA)の調査に全面協力するという。

 ジャマイカではパウエルを含む5選手が陽性反応を示した。6月には女子200メートルで2004年アテネ、08年北京五輪を連覇したベロニカ・キャンベルブラウンの薬物違反が見つかったばかり。ボルトを生んだスプリント王国で、組織的なドーピングも疑われる。