平昌(ピョンチャン)五輪開幕が1カ月後に迫ってきた。日本勢は06年トリノ五輪金メダル荒川静香以来4大会連続のメダルに向けて出陣する。今シリーズは「他国のライバルたち」と題して、男女シングルの注目選手を紹介する。第2回はアリーナ・ザギドワ(ロシア)。

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 世界女王メドベージェワと同じ拠点で背中を追ってきた15歳は、平昌五輪金メダルを視界に捉えても冷静さが際立つ。昨年12月のグランプリ(GP)ファイナルではメドベージェワが故障で欠場していたとはいえ、世界歴代4位の合計223・30点で初優勝。その結果をも「今大会は調子が良かった」と落ち着いた口調で振り返った。

 多くのファンにその名を知られたのはジュニアだった昨季。16年12月のジュニアGPファイナルで頂点に立つと、17年3月の世界ジュニア選手権も制した。208・60点のジュニア歴代最高得点で1歳年上の本田真凜の2連覇を阻止。リラックマのぬいぐるみを抱きしめる愛くるしい姿と対照的に、五輪について聞かれても「1つ1つの試合に集中してきた。まだ考えていない」と言い切っていた。

 2季連続のフリー「ドン・キホーテ」における大きな魅力は、基礎点が1・1倍となる演技後半に7つ全てを盛り込んだジャンプ。その口火を切るルッツ-ループの連続3回転ジャンプは、多くの選手が2つ目に組み入れるトーループから難度を上げた大技だ。「ジャンプが好き。氷上では自信を持って、闘争心を持つようにしている」。カラシニコフ銃の製造で有名なロシア中部イジェフスク出身で、故郷に両親と妹を残して練習拠点のモスクワでは祖母との2人暮らし。その環境下で妥協なく、自分の技術と心を高めている。

 ロシア女子の五輪出場枠は3で、17日開幕の欧州選手権後に代表が決定。その中でも昨年12月のロシア選手権を合計223・59点で制したザギトワにかかる期待は大きい。国ぐるみのドーピング問題で国旗や国歌を五輪で使用できないロシア。個人資格で「ロシアからの五輪選手」として出場する見通しだが「私がどの国を代表して滑っているかをみんな知っているし、私もどの国を代表して演技しているかを知っている」と力を込める。日本に置き換えれば中学3年生世代の美しき新星が、世界の頂点に立つ日は近い。【松本航】

 ◆アリーナ・ザギトワ 2002年5月18日、ロシア・イジェフスク出身。モスクワでメドベージェワらと同じトゥトベリーゼ・コーチの指導を受ける。片手や両手を上げながら跳ぶジャンプで出来栄え点を稼ぎ、シニアデビューの今季はGP中国杯、フランス杯、ファイナルなど国際大会負けなし。身長156センチ。

ザギトワの戦力チャート
ザギトワの戦力チャート