2022年。年明けから箱根駅伝では青山学院大が大会新記録で2年ぶり6度目の優勝、高校サッカーでは青森山田の圧倒的な強さが光るなど、スポーツのニュースを多く見ていた。あっという間に年末年始は過ぎていく。

そんな感覚だったが、ふと自分が現役の時を思い出すと、年末は次の春に向けてハードなトレーニングを重ねていたなぁと思いをはせた。スポーツニュースや中継を見て、今このテレビの画面の中にいるアスリートたちは、年末年始もなく、今が1番の勝負時として頑張っているんだとも思い、学生の頑張りを心からリスペクトした年始だった。

27歳まで私も現役だったので、競泳のルーティンとしては年末が一番ハードな練習だった。今は時代が変わり、プロリーグ(ISL)ができたりして、時期ごとの練習内容などは微妙に異なっている。しかし私は「年末こそ勝負の時」という気持ちでいたし、年始は必ず初詣に行き縁起を担いだ。できるだけ部屋はきれいにして、いろんなものに対してもベストを尽くしていた。

どれだけ、ベストを尽くすということが、大変で緻密なものかというと、日々のコンディションの調整など、針の穴に糸を通すような感覚を追求する日々なのだ。トップアスリートの日々はシンプルであり、研ぎ澄まされている。

そんなこと考えていると、1月11日、体操のレジェンドでもあり、北京オリンピックから4大会連続オリンピックに出場した内村航平さんが引退を発表した。「自分の演技をする」、つまり、針の穴に糸を通すような自身の理想の演技、動き、体操を追求することがいかに大変か。そして、それができた時には大きな自身の自信になったり、課題が見つかったり、他者(自分以外)からは大きな称賛などをもらう。この日々を長年続けてきたことを最高に私は尊敬する。その中で見えた世界は最高のギフトだし、レッスンになっていることだろう。

優勝し帝京大の選手たちに胴上げされる岩出監督(撮影・江口和貴)
優勝し帝京大の選手たちに胴上げされる岩出監督(撮影・江口和貴)

そのほかには何と言っても、大学ラグビーの面白さが光った。関東対抗戦で帝京大が1位になってから、「優勝」の文字がリアリティーを増していった。2日に行われた準決勝では帝京大学と明大が勝ち、決勝カードが決まった。そして9日の決勝は、帝京大が27-14で明大を下して大学日本一に。2017年以来、4大会ぶり10回目の優勝だ。

帝京大と明大といえば、4年前の大学選手権決勝で帝京が21-20で勝利して以来の決勝での対戦。それ以降、帝京大は決勝に進めなかった。当時、岩出監督が言っていた。「次の世代は少し変わるかもしれない。チーム作りはしっかりしないといけない」。次の年はベスト4だった。2019年度は3回戦敗退。2020年度はベスト4。岩出監督の勇退報道もあった。

いつも岩出監督が言っていた。「学生だから。この4年間で何か学んでほしい」と。常に教育者という印象だ。指導者がいかに重要なのかを、私は現役時代もそうだし、引退後はさらに感じている。いわゆる「トップ=エリート」は全体のほんの一部。学生スポーツ(部活など)でもだ。勝つためにやるけど、勝つだけではないはずだ。

もちろん、エリートに到達するまでには、勝利を重ねなければ栄光と呼ばれるものは見えないのかもしれない。帝京大ラグビー部だって100人を超える部員がいる。全員が試合に出場できるわけではない。岩出監督が「出られない選手の方が多い。それが現実。しかし、同じチームとして戦うんだ」と言っていたことが忘れられない。今の社会でも大事な、組織をつくっていくマネジメント力。私たちはスポーツの現場から学ぶべきことも多い。

1月8日にラグビー新リーグの「リーグワン」も始まった。スポーツの概念が本当は広く、さまざまなことを網羅するものだということが広まっていく2022年になると期待している。

(伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表)