10月9日、絶好のスポーツ日和秋晴れの中、東京・台場で第28回日本トライアスロン選手権が開催された。

今年も海外でワールドトライアスロンチャンピオンシップシリーズやコンチネンタルカップに出場している選手も多く、また、東京オリンピックを期に競技を引退した選手もいるので、昨年とは違う顔ぶれで誰が優勝するのかとても興味深かった。

優勝杯を手にする男子優勝の小田倉真(左)と女子優勝の林愛望(撮影・宮地輝)
優勝杯を手にする男子優勝の小田倉真(左)と女子優勝の林愛望(撮影・宮地輝)

男子は誰が勝っても初優勝。その中でも東京オリンピック代表の小田倉真が最有力候補として挙げられ、前評判通り圧勝した。2位は急成長中の玉崎稜也。バイクで第3集団から第1集団に上昇し、得意のラン勝負で追い上げた。今年インカレで優勝した吉川恭太郎が、3種目安定した力で3位に入った。

女子は優勝経験のある佐藤優香に加え、今年の栃木国体優勝者の江田佳子、同2位の福岡啓らが初優勝を狙う中、17歳の林愛望(はやし・まなみ)が経験のないオリンピックディスタンスでどこまで戦えるかに注目が集まった。

結果は林選手がお見事というレース展開で、男女を通じて最年少での優勝を飾った。2位は福岡、3位には江田と続いた。

日本選手権を制した林愛望
日本選手権を制した林愛望

今年のインターハイに陸上競技(1500メートル)で出場している林選手は、しっかりとした足取りで走り抜き、史上初の高校生チャンピオンとなった。今シーズンは日本スプリント選手権、U23日本スプリント選手権に加えて日本選手権も勝ち取った。まさにトライアスロン界に「新星」が現れた格好だ。

彼女は来月18歳を迎える若いアスリートだ。私はその年齢と体つきに注目した。

このコラムで何度か女性アスリートの身体の変化・問題を題材にしているが、私自身経験してきた持久系スポーツは、身体が変化していない時期に活躍する選手と、身体が変化した後に活躍する選手、また身体の変化に関係なく活躍する選手がいる。

身体が変化する前に活躍した選手は、身体の線が細く、「軽さ=速さ」という印象を受ける。

身体の変化に関係なく活躍する選手は、身体の線がしっかりとして、体幹や足腰が強い印象がある。

正直、日本人は前者が多いと感じる。

私も経験者なのでわかるが、「軽さ=速さ」の意識が抜けないのだ。月経不順、無月経は当たり前、速くなるために食べないで減量する。その際、一時的には速くなるので、それが正しいと思いがちだ。

バイクをこぐ林愛望(撮影・宮地輝)
バイクをこぐ林愛望(撮影・宮地輝)

2013年、私が初めてトライアスロンのワールドカップに出場した際に衝撃を受けたことがある。それは、海外の女子選手は身体がしっかりとしていることだ。それぞれ体質はあると思うが身体の変化に身を任せ、その時期の自分の身体と向き合って競技をしている印象を受けた。

林選手は、後者に当たると感じる。

153センチと小柄だが走りが力強く、体幹や足腰がしっかりしている。また、走り方もとても良い。フォアフット走法だと身体が軽い時しか走れず、体重の変化によっては故障する原因となりかねない。彼女の走りはしっかりと地面を捉え、押し出す走り。体幹も強く脚筋力があるので、もし今後身体の変化があっても対応できるフォームだと感じた。

選手それぞれ体形や体質は違うので、一概に「この走りが一番良い」とは言い切れないが、トライアスロンの発展を望む中では、ランのフォームにフォーカスしてもいいと思う。

林選手の活躍は日本トライアスロンの好転機となると感じている。

(加藤友里恵=リオデジャネイロ五輪トライアスロン代表)