東京オリンピック(五輪)の熱戦から早2年。
コロナの影響で1年延期となった為、あっという間に来年にはパリ五輪だ。
トライアスロン・パラトライアスロンは8月17~20日にかけて、パリ五輪パラリンピック競技大会のテストイベントが開催された。
■美しいシャンゼリゼ通り
17日はトライアスロン女子、18日はトライアスロン男子、19日はパラトライアスロン、20日はミックスリレーが行われて、白熱したレースが繰り広げられた。
開催都市の中心で競技を実施し、都市の有名なランドマークがコースとなっている。
選手たちはアレクサンドル3世橋の下に設けられたポンツーンからスタート。セーヌ川を泳いだ後、階段を上ってアレクサンドル3世橋の上のトランジションエリアへ。
バイクでは世界で最も美しいとされる通りのひとつシャンゼリゼ通りなどパリの街並みを駆け巡るコースレイアウトだ。ヨーロッパならではの石畳のエリアが多いので選手たちは身体の消耗に加えて神経も消耗されるコースとなっている。
フィニッシュもアレクサンドル3世橋の上に設けられ、パリを堪能できるコースとなっている。
■女子の日本勢は岸本新菜37位
まずは初日の女子のレース。
セーヌ川は潮の流れがあり、スイムから戦略が大切になってくる。普段のスイムレイアウトは750メートル×2周が主流だが、五輪は1周目が1000メートル、2周目が500メートルとなっており、泳力差がつきやすいのも特徴の1つだ。それに加えて今回は潮の流れも見極める必要がある。
主力選手の多くはバイクで第1集団には入っていたが、普段はレースを引っ張る立場の実力者で出遅れている者もいた。日本選手では高橋侑子選手が良い流れを作り、第1集団に乗り冷静にレースを進める。
バイクフィニッシュ時には第1集団と後続とでは3分程差ができていた。
ランはやはり力のある選手たちが力走をみせる。
最初に主導権を握ったのはフランスのカサンドラ・ボーグランド選手だった。彼女は16年リオデジャネイロ五輪の際からパリ五輪の主要選手として名があがっていた。当時はまだ10代であどけなさが残り、バイクでも落車などのトラブルが多い印象があったが、今では経験値と強さも兼ね備えた実力者として世界のトップ選手となった。力走からもパリ五輪に向けた気迫を感じた。
そこに英国のベス・ポッター選手が並走する展開。
彼女はリオ五輪の際は陸上競技女子10000メートルで英国代表となっている。その後、17年ロンドン世界選手権10000メートルに出場後、本格的にトライアスロンに転向。東京五輪への出場は叶わなかったものの、スイムのパフォーマンスをあげトライアスロン界の強豪揃いの英国の中でも頭角を表し、昨シーズンから安定して好成績をおさめている。
今回は東京五輪の金銀メダリストが不在、銅メダリストの米国代表ケイティ・ザフィアレイズ選手は昨年に第1子を出産し、復活したばかりなので優勝争いには加われず、東京五輪とはまた違うメンバーのトップ争いとなった。(ザフィアレイズ選手は12位、産後にも関わらず素晴らしいパフォーマンスだった)
最終的にはポッター選手がボーグランド選手とのデットヒートの末、ラスト300メートルで振り切り勝ち切った。ランのタイムも32分台の好タイムをマークした。
日本勢は怪我から復帰した岸本新菜選手が37位でのフィニッシュとなった。
ここから調子をあげ、日本女子に勢いをつけてほしいと願う。
【エリート女子 上位と日本選手の結果】
1位:ベス・ポッター(英国)1時間51分40秒
2位:カッサンドル・ボーグランド(フランス)1:51:46
3位:ラウラ・リンデマン(ドイツ)1:51:59
37位:岸本新菜(リソル・稲毛インター/千葉)1:57:52
44位:福岡啓(オクタケグループ/福井)1:58:36
57位:佐藤優香(トーシンパートナーズ、NTT東日本・NTT西日本、チームケンズ/山梨)2:01:08
59位:池野みのり(SAGA SPORTS PYRAMID/佐賀)2:03:09
DNF:高橋侑子(相互物産/東京)
(全65名)
■男子の北條巧は積極的なラン20位
続いて男子は、東京五輪メダリストが勢揃い。そして、自国フランス勢の争いに注目が集まった。女子と同様、男子もスイムからパックが分かれ、バイクへ移った。
第1集団はフランス勢が積極的に牽引。第2集団は東京五輪金メダリストのクリスティアン・ブルメンフェルトはじめとするバイクの強い選手が力走し、みるみるうちに先頭集団に追いつき50名程の第1集団が形成された。
大集団で観ている方がハラハラしてしまったが、1人が落車した以外は大きなトラブルなくランへ。
そこで衝撃の映像が飛び込んだ。東京五輪銅メダリストで今大会でも優勝候補の1人だったニュージーランドのヘイデン・ワイルド選手がランスタート直後に倒れ込むアクシデント。それでも気力を振り絞りレースを続行していたが、身体の不調により途中リタイヤとなった。同じくフランスの有力選手ヴィンセント・ルイ選手も故障明けでまだ身体がフィットせず途中リタイヤとなった。有力選手のアクシデントもある中で、他者に圧倒的な力をみせたのが東京五輪銀メダリスト、英国のアレックス・イー選手だった。
終始先頭を走り、独走状態で危なげなくフィニッシュ。見事テストイベントで優勝し、来年の本番に向けて弾みをつけた。
イー選手は、10000メートルを27分台で走る元陸上選手だ。現在は主にトライアスロンを主戦場としているか、時々陸上の大会にも出場している二刀流選手。今後の活躍にも注目だ。
2位から5位は混戦。2位にはポルトガルのバスコ・ビラカ選手、3位にはフランスのドリアン・コニックス選手が激闘した。
また、4位、5位もフランス勢となり、パリ五輪に対する熱意を感じる結果となった。
フランスはパリ五輪枠が3枠ありこの結果をもって3位に入ったコニックス選手は内定。あとの2枠を巡る激戦が続く。
日本勢は先日ワールドカップで初優勝を果たした北條巧選手がランで積極的な走りをみせ日本勢最高20位でのフィニッシュとなった。切磋琢磨し合いながら、日本男子勢の更なる底上げをし、世界のトップ選手たちと勝負してほしいと願う。
【エリート男子 上位と日本選手の結果】
1位:アレックス・イー(英国)01:41:02
2位:バスコ・ビラッサ(ポルトガル)01:41:15
3位:ドリアン・コナン(フランス)01:41:15
20位:北條巧(NTT東日本・NTT西日本/東京)1:42:36
28位:小田倉真(三井住友海上/東京)1:43:19
43位:古谷純平(三井住友海上/東京)1:44:14
48位:ニナー賢治(NTT東日本・NTT西日本/山梨)1:44:45
54位:安松青葉(アクサスホールディングス/東京)1:49:37
(全65名)
■パラ宇田秀生3位に食い込む
3日目はパラトライアスロン。
水質の影響でスイムがキャンセルされ、デュアスロンに変更して開催された。
PTS4男子に出場した東京2020大会銀メダリストの宇田秀生選手が3位に食い込み、見事表彰台に登った。不安定な石畳のバイクコースは宇田選手にとっては乗りこなすのが大変だったに違いない。しかし、持ち前のフィジカルと精神力で難関を克服し、来年の本番に向けて良いイメージができたと思う。
今後の活躍も楽しみだ。
【男子PTS4上位3名と日本人結果】
1位:アレクシ・アンカンカン(フランス)55:38
2位:ピエール・ワントワーヌ・バエレ(フランス)55:45
3位:宇田秀生(NTT東日本・NTT西日本/滋賀)58:13
(全7名)
PTVI男子に出場した東京五輪銅メダリストの米岡聡選手は、寺澤光介さんをガイドに迎えて初めてペアを組んでレースに挑んだ。PTVI男子のカテゴリーは世界的にもレベルがあがっている中、7位に入賞した。
これから経験を積んで、更なる飛躍に期待したい。
【男子PTVI上位3名と日本人結果】
1位:デイブ・エリス(英国)53:39
2位:サム・ハーディング(オーストラリア)55:13
3位:オーウェン・クレベンス(米国)55:17
7位:米岡聡(三井住友海上/東京)57:08
(全9名)
■ミックスリレーはドイツV
パラトライアスロンにおいてもフランス勢の活躍が光ったように感じる。
最終日は、ミックスリレーが開催された。パラトライアスロンと同じく水質の影響でデュアスロンへと変更。この変更が各国にどういう影響をもたらすか注目した。
昨年から出走の順番が変わり、男子からスタートとなった。1走から激しい順位争いが繰り広げられ、私は内心「デュアスロンはあまり差がつかないか?」と感じた。
しかし、2走でエリート女子で2位だったボーグランド選手(フランス)が他選手を寄せ付けない圧倒的な速さで3走へ繋いだ。
3走のレオ・ベルジェール選手(エリート男子5位)は単独のバイクパフォーマンスが非常に高く、後続との差をつけたまま、4走のエマ・ロンバルディ選手(エリート女子4位)へ。ロンバルディ選手が先頭を突き進む中、エリート女子で優勝をしたポッター選手(英国)とエリート女子3位のローラ・リンダマン選手(ドイツ)が追走し、逆転した。
最後はリンダマン選手がポッター選手を振り切り、ドイツが優勝、2位が英国、3位にはベルギーが食い込んだ。
フランスが優勝の最有力ではあったが、デュアスロンになったこと、距離が短いこと、単独で逃げていたことなどの要因もあり、4位となった。
これがミックスリレーの面白いところだと改めて実感した。
日本勢は東京2020大会と同じメンバーで挑み、16位となった。来年に向けて戦略など含めて良いシュミレーションが出来たと思うので、日本チームの底力に期待したい。
■「もう1年」か「まだ1年ある」か
4日間に渡り開催されたテストイベント。
ライブ中継で観戦となったが客観的にみて、セーヌ川の潮の流れや石畳のバイクコースがポイントとなりそうだ。「ただ速い選手」よりも、「強く、賢い選手」が勝機に繋がると感じた。
パリ2024大会まであと1年。
「もう1年」と捉えるのか、「まだ1年ある」と捉えるかでも日々の内容が変わってくるはずだ。
1年後、パリの街並みを力走する選手たちを楽しみにしている。
(加藤友里恵=リオデジャネイロ五輪トライアスロン代表)








