波乱のジャンプを見ながら、涙が出そうになった。日本だけでなく、世界の女子を引っ張ってきた高梨沙羅の失格、少しでも上を目指したエース小林陵侑の大ジャンプ。「何が起こるか分からない」とは言われるが、起こりすぎだった。

今大会で初めて採用された混合団体戦。男女ともトップレベルの日本はメダル候補だった。小林陵の金メダルに「日の丸飛行隊」は好ムードだった。だからこそ、最後は高梨の心からの笑顔を見たかった。

4チームに失格が出るのは異例だという。初採用の種目で、通常とは違う何かがあったのか。ただ、誤解を恐れず言えば、試合としては面白かった。目まぐるしく変わる順位に、チームとしての一体感。高梨を抱きしめる小林陵の姿は、とても印象的だった。

今大会、男女混合種目が新たに4つ採用され、109種目中7種目になった。72年札幌はもちろん、98年長野では1つもなかった混合種目が初めて採用されたのは14年ソチ大会。フィギュアの団体とバイアスロンの混合リレーだった。

フィギュアはこの日、日本が初めてメダルを獲得した。個人戦がメインの競技で団体、まして男女混合には違和感があった。日程的にも直後に行われる男子にとっては負担が大きい。「おまけは必要ない」とも思っていたが、真剣に試合に臨む選手の姿と笑顔を見て考えも変わってきた。

今大会だけではない。昨年の東京五輪では、新たに混合種目が急増した。9種目が採用されて一気に12種目(馬術は除く)。卓球の複合ダブルスや柔道の団体など日本人が注目した競技も少なくなかった。

IOCは「男女平等」を重視する。混合種目を増やすことが「平等」なのかには疑問もあるし、実際に競技によっては力の異なる男女が同時にやるのはケガなどのリスクもある。IOC内にも混合種目急増に異を唱える声もあるという。それでも、バッハ会長は強行する。ゲーム性の高い混合はテレビの受けもいい。興行として「おいしい」。

もちろん、混合種目を増やせば各国とも女子スポーツに力を入れる。まだまだスポーツ界に男女格差がある国もある。「女子スポーツの振興」はIOCのテーマだ。かつて日本でも運動会のリレーは男女別だったが、今は混合リレーが当たり前。時代とともに、五輪も変わる。【荻島弘一】

(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIのOh! Olympic」)

フィギュアスケート団体、演技を終えた小松原美里、尊組に拍手を送る日本ベンチ(撮影・菅敏)
フィギュアスケート団体、演技を終えた小松原美里、尊組に拍手を送る日本ベンチ(撮影・菅敏)