東京オリンピック(五輪)チケット抽選申し込みが5月9日から29日正午まで行われた。「先着順ではない」ということが周知されておらず、初日からサイトが大渋滞し「ゴール」にたどり着けない人が続出した。その後、解消されたものの、28日の締め切り直前には再びアクセスが集中、組織委員会は半日延長し、なんとかしのいだ。記者も初日から申し込みにチャレンジし、悪戦苦闘の末、2日目深夜にようやく完了して一安心。

ところで、もし抽選が当たったらこの後どうするんだっけ?

申し込むことに必死で、「ソノサキ」を調べることを忘れていた。何人かに同じ質問をされたので同じような疑問を抱いている人も多いと思う。6月20日に抽選結果がメールで届き、7月2日中にすべてを一括購入しなければならない。現金払いができるのは30万円まで。それ以上はクレジットカードからの引き落としのみとなる。

実はクレジットカードに関して、現在東京五輪でのキャッシュレス化を促す活動が行われている。現金利用者の多い日本ではコンビニやスーパーのレジに並ぶのが当たり前になっているが、海外からの観光客が先進国日本で驚くことの1つに「カードが使えない」ことを挙げる。京都や金沢など一部観光地では自治体が動いてキャッシュレス化が進んでいるが、現在日本でのクレジット支払可能な店舗の普及率は約18%。韓国や米国では80%を超え、スウェーデンでは98%とほとんどのお店でカード払いが可能となっている。政府もこの問題を取り上げ、25年までに40%を目指す方針を発表している。

元バドミントン日本代表で、五輪2大会に出場した池田信太郎氏(38)も自身の経験を生かし、キャッシュレス化を広げようと広報活動を行っている。現役中から遠征で海外に行くことも多く、カードが使える便利さを感じた。「現金をあまり持たなくてよく、盗難や紛失の恐れも少ない」と話す。

東京五輪の各会場内のグッズや飲食店などはカードやスマホでの購入が可能となる予定。行列をなくし、少しでもスムーズに購入できるように工夫していく。「たくさん売れて、ロスなく席に戻って気持ち良く観戦できるように。早く済ませることもおもてなしの1つ」と熱く語った。

東京五輪後も活動と続けていく池田氏。「スポーツを契機にスマートなライフスタイルを送れる先進国にしていきたい」。

せっかく苦労して取ったチケット。おそらくは一生に1度の自国開催。「レジに並んでいるうちに世界記録を見逃した…」なんてことは避けたいものだ。

◆松熊洋介(まつくまようすけ) 1977年(昭52)4月30日、福岡県生まれ。日刊スポーツ新聞社に入社後、編集局整理部、販売局を経て、昨年12月より東京五輪・パラリンピックスポーツ部に異動。現在ラグビー、バドミントン、バスケットボール、ソフトボール、アイスホッケー、カヌー、ボートを担当。