男子100メートル背泳ぎで4位だった入江陵介(27=イトマン東進)は、練習拠点をアメリカに移したことで選手として変わってきましたね。いい意味で「繊細さ」がなくなったという感じです。

 周囲のことも自分のことも細かなことまで気にするタイプの選手です。もちろん悪いことではないのですが、今年になって、これも良い意味で「大ざっぱ」になってきました。長年指導を受けた道浦コーチから離れ、さまざまなことを乗り越えて、自分を良い方向にコントロールすることができるようになったのではないでしょうか。

 昨年のリオ五輪では「賞味期限が切れた」というコメントもあったり、その後何度も話をしましたが、落ち込んでいるのかなと感じるときもありました。10代から日本代表入りして、変動していくチームの中のポジションに戸惑いを感じていたのかもしれません。

 それが今大会ではブレがない。現在27歳。今回の代表の中では30歳の古賀淳也選手に次いで2番目の年長者です。北島選手ら先輩たちが教えてくれたことを後輩に伝える立場。ベテランとして、決意が固まったのだと思います。

 東京五輪のときには30歳になります。選手として、人間として成長した入江選手を、3年後の大舞台で見たいですね。(伊藤華英=北京、ロンドン五輪代表)

 ◆伊藤華英(いとう・はなえ)1985年1月18日、埼玉県生まれ。08年北京五輪で背泳ぎ2種目出場、12年ロンドン五輪は自由形リレー2種目出場。12年秋に現役引退。順大大学院博士後期課程修了。日大非常勤講師。173ンチ。