男子62キロ級で16年リオデジャネイロ五輪4位の糸数陽一(26=警視庁)が、スナッチ134キロ、ジャーク165キロのトータル299キロで初の銀メダルを獲得した。日本男子が世界選手権でメダルを獲得するのは81年フランス大会で52キロ銅の真鍋和人以来36年ぶり。20年東京五輪での日本男子36年ぶりのメダルに向け、好スタートを切った。

 日本男子40年ぶりの金まであと1歩だった。最終試技を前に1位だった糸数は、コロンビア選手に1キロ抜かれて2位に後退。最後のジャーク3回目で、昨年のリオ五輪で持ち上げた169キロを1キロ上回る170キロに設定。逆転の金を狙ったが「両腕がつった」とバーベルを落として失敗。「最後の勝負で詰めの甘さが出た」と悔しがりつつも、日本男子36年ぶりの表彰台を「うれしい」と素直に喜んだ。

 リオでは日本記録のトータル302キロで4位入賞。満足して帰国も「日に日に、悔しさが増してきた」。取り巻く状況は変わらず、メダルへの思いはより強まった。15年から指導を仰ぐ64年東京、68年メキシコシティー五輪金メダリスト三宅義信氏(78)とは「(表彰)台の上に上がろう」と約束していた。競技後、日本にいる三宅氏に電話で報告すると「よくやった」とねぎらわれると同時に「明日、あさってと練習してから帰ってこい」とハッパを掛けられた。

 今回はドーピング問題で有力国が抜けた大会。記録も自己ベストは出せなかった。糸数は「東京五輪に向け、さらに力を付けたい」と気を緩めない。年末年始も休み返上で、レジェンド三宅氏と合宿を積む予定だ。

 ◆糸数陽一(いとかず・よういち)1991年(平3)5月24日、沖縄県南城市生まれ。豊見城高から本格的に重量挙げを始め、2年から2年連続で3冠(選抜、総体、国体)。日大を経て、警視庁所属。16年リオ五輪でともに日本新のジャーク169キロ、トータル302キロを出し、4位入賞。160センチ。

 ◆日本重量挙げ協会の三宅義行会長のコメント よくやってくれた。いい試合だった。東京五輪に向けてやりがいがある。(糸数は)パワーがある。本来のメンタルの強さももっと試合で出してほしい。