女子3000メートルで高木美帆(23=日体大助手)が3分57秒09の日本新記録をマークし、同種目の日本勢として初のW杯(ワールドカップ)優勝を果たした。02年に田畑真紀が出した日本記録を3秒92塗り替え、W杯では1000メートル、1500メートルと合わせて通算5勝目。急成長を続ける中長距離のエースが、またしても世界を驚かせ、平昌(ピョンチャン)五輪の主役に名乗りを上げた。

 日本勢がはじき返され続けてきた壁を、高木美が豪快に突き破った。優勝が決まると、ヨハン・デビット・コーチに「強かったぞ!」と抱きかかえられ、笑顔満開。オランダのスター選手ブスト、デヨングを両脇に従えるように、表彰台の中央で歓声を浴びた。個人種目で最古の日本記録を4秒近くも更新。歴史を塗り替える滑りも、冷静さは失わず「順位よりもレース展開、タイムの方がうれしい。今日できたことを次につなげたい」と静かに勝利の味をかみしめた。

 後半の強さが快挙につながった。14年ソチ五輪金メダリストで、1組前を滑ったブストとタイムを比較すると、1400メートルまでは後れを取ったが「リズムが崩れなかった」とそこからのラップを31秒前後でキープする粘りの滑りで、勝利をたぐり寄せた。長距離で五輪3大会出場の日本スケート連盟・白幡圭史強化副部長は「オランダの独壇場だったこの種目で勝てた意味は大きい。世界の構図を少し崩せた」と驚くように言い、「1500メートルでW杯を勝てるスピードに、体幹が強くなったことで、コーナーで失速しないテクニックが加わった」と技術面の成長にうなずいた。

 今季のW杯は得意とする1500メートルで2戦2勝、1000メートルでも2位2回と、平昌五輪では3000メートルを加えた個人3種目でのメダル獲得も視界に入ってきた。一昨季20戦で1度もなかった個人種目のW杯表彰台は、昨季17戦で6回、今季は6戦で5回と進化は数字にも表れている。レース後、米テレビ局から14年ソチ五輪落選時の思いを聞かれると、「そこから意識を変えた。もっとスケートに集中するようになった」と表情を引き締め直して応えた。4年前の失意から、ひと回りもふた回りも成長した23歳が、スケート界に大きなうねりを生みつつある。【奥山将志】