選手からパワハラを告発された日本体操協会の塚原光男副会長(70)と塚原千恵子女子強化本部長(71)が8月31日、声明を発表して徹底抗戦する姿勢を示した。告発したリオデジャネイロ五輪女子代表の宮川紗江選手(18)に謝罪しながらも、発言内容を否定。「進退」にも言及して、戦う決意を強調した。

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塚原体制が、あまりに長すぎた。千恵子本部長は76年モントリオール五輪に指導者として初参加。コマネチを見て若手強化を決意し、わずか3人で朝日生命クラブをスタートさせた。消滅危機も乗り越え40年で24人もの五輪代表を輩出。女子強化に人生をかけ、苦労の末に確固たる地位を築いた。周囲は気を使い、意に沿って動くようになる。本人の自覚がないままに「パワハラ」が起きた。

91年11月、全日本選手権で女子91選手中55選手が朝日生命寄りの採点を理由に大会をボイコットした。当時の塚原光男女子競技委員長は辞任したが、千恵子女子ナショナル強化部長は辞意を撤回。その後、空白期はあったが、女子の代表強化は多くの期間を2人で担ってきた。夫妻の「女子を強くしたい」という熱意と努力は本物だったと思う。

体操協会の強化本部は男女別。強化方針も選考方法も違う。五輪金メダル量産の男子は人材も豊富で、本部長は選手を持たずに中立な38歳の水鳥寿思氏が務める。しかし、64年東京五輪以来メダルのない女子はトップの指導者が少なく、本人たちが望まなくても70代の塚原夫妻に権力が集中していった。長期政権で、それが増大。女子コーチはもちろん、男子指導陣も、日本協会も「アンタッチャブル」な存在だった。だからこそ、結果がどうあれ18歳の告発には意味がある。【荻島弘一】