男子テニスで、日本のエース錦織圭(30=日清食品)が、新型コロナウイルスに感染した。自身の公式アプリで16日に明らかにした。錦織は体調不良に加え発熱があり、拠点とする米フロリダで検査を受け、陽性反応が出た。軽症だといい、すでに自主隔離中。約1年ぶりの実戦復帰の予定だった22日開幕で全米前哨戦のウエスタン・アンド・サザン・オープン(ニューヨーク)は欠場する。21日に再検査を受けるが、31日開幕の全米オープン(同)出場に黄信号がともった。

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日本が誇る世界のスターにも、新型コロナの魔の手が伸びた。感染者世界最多の米国にいる錦織は、徹底的な感染対策をとっていたが、知らぬ間にウイルスが忍び寄っていたようだ。日刊スポーツが復帰に向け、単独インタビューをした7月31日、自身の体調や新型コロナに対して、次のように話していた。

錦織 手洗いとか、基本的なことはきちんとやっている。買い物や(拠点とする)IMGアカデミーから帰った後は、すぐに着ていた服をすべて洗濯。行くところもアカデミーかスーパーで、人が集まるようなところには行かなくてすんでいる。

感染者が、全米で2番目に多い50万人を超えた米フロリダ州。どんなに対策をしても、ゼロリスクなどあり得ないが、街の様子には違和感があったようだ。

錦織 あんまり街自体は危機感がない。お店も通常通りに営業しているといえば、営業しているので。

インタビュー時にも前哨戦や全米への出場を、最終決断していなかった。

錦織 一応、エントリーしているが、少し体の心配がある。新型コロナの影響で、フロリダからニューヨークに移動することが(出場する)決定打にならない理由の1つ。これから、どうなるか分からないが、まだ2週間あるので様子を見たい。

そして、ここ数日で体調不良を感じ、38度近くの熱が出た。現地時間17日にニューヨークに移動することもあり、検査を受けた。その結果を受け、自身のアプリでは、次のようにコメントした。

「体調は悪くなく、症状も軽い。周囲にうつさないためにも自主隔離する。21日に、チームも含めて再検査を受ける」

関係者によると、21日に再び陽性だと、完全に全米出場は断念せざるを得ないという。ただ、陰性であっても、1年ぶりの実戦がいきなりの4大大会。それも5セット試合だ。今回の陽性で、少なくとも全米直前まで練習もできなくなる。万全の態勢で臨むのは非常に難しい。

錦織は、「今後、出られる大会にはすべてエントリーする」と話している。2週間開催の全米の2週目に開催予定のオーストリア・キッツビューエルのツアー大会にもエントリーしており、9月8日に開幕だ。しっかりと治し、9月27日開幕に延期された全仏出場を目指し、欧州からスタートするのも1つの手。せっかくの復帰戦。急ぐ必要などない。【吉松忠弘】

◆ウエスタン・アンド・サザン・オープンと全米 当初の日程では「ウエスタン-」は8月17日から米シンシナティで開催予定だった。しかし、選手の移動を軽減するため、全米前週に全米と同じ会場での実施に変更。ともに無観客で行われる。全米は予選を行わず、ダブルスは通常の1/2、32組出場に削減。混合ダブルス、ジュニアは開催されない。今季の4大大会はウィンブルドン選手権が75年ぶり、2度の世界大戦以外では初めて中止に。全米後は、5月24日に開幕予定だった全仏オープンが9月27日~10月11日に延期され、行われる。

◆コロナ禍のテニス界 3月からツアーは中断したが、再開を急ぐ男子世界ランキング1位のジョコビッチが非公式戦を主催。母国セルビアのガイダンスに則ったが、約5000人の観客がマスクなしで密状態。大会後には無防備でのパーティーを開催するなどしジョコビッチ、ディミトロフ、チョリッチらトップ男子選手が感染した。また、米国と他国の移動に伴う隔離期間が明確にならないため、男子のナダル(スペイン)、女子のバーティ(オーストラリア)ら多くの欧州やオーストラリアの強豪が、時期尚早と全米欠場を表明している。