20年ユース五輪(オリンピック)金メダルの鍵山優真(17=星槎国際高横浜2年)が、シニアデビュー戦のSPで98・46点をたたき出した。

冒頭の4回転サルコー-3回転トーループを決めて勢いに乗ると、4回転トーループも、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)も華麗に成功。今季から世界的振付師ローリー・ニコルさんの指導を受けているSP曲「Vocussion」を完璧に演じ、フィニッシュの瞬間、突き上げた右拳を小さく握った。キス・アンド・クライで佐藤操コーチと得点を確認すると、笑顔で自身に拍手。納得の首位発進だった。

国際スケート連盟(ISU)非公認ながら、シニア1年目の初戦で世界歴代9位相当の高得点をマーク。「まだ滑り込めてはいなかった中で、ほぼ100点に近いスコアが出たのでビックリしています」と自分でも驚いたが「ジャンプもそろいましたし、全体的には良かったかなと思います。ただ、ステップで足が引っ掛かったり、トーステップが多いのでつまずいたり(構成予定から)飛んだりしたことは課題」と冷静な自己分析も添えた。

体形をきれいに見せるため、細身に仕立てた衣装もはまった。見栄えも良くして跳んだジャンプは、練習から自信があったという冒頭の2連続が出来栄え点(GOE)3・88点を稼ぐ完成度だた。反対にステップシークエンスの評価は4段階のレベル2。改善点、つまり、まだ点が伸びる可能性も示し「あと2点で100点だったので、試合を重ねるごとに、徐々に点数を上げていければ。難しいですけど、今までにない動きで楽しい。あとは滑り込むしかない」。意欲的な言葉の多さが手応えを物語っていた。

8月15日に始めたニコルさんとのリモート振り付けにも慣れてきた。先月12日のアイスショー「ドリーム・オン・アイス」で初披露した際は「まだまだ」と厳しく指摘されていたが「今はイメージもできてきて、こちらから提案しても『いいね』と言ってくださる時もあります」。関係性を深め合う中で「振り付けも先月から少し変えたので良くなりました。最後のポーズが『つらそうに見える』と言われたので、座って終わりではなく立ったままに変えたり、止まるところを両足から片足に変えて少し格好良くしています」と、着実に質を高めている。

関東選手権の男子は、同学年の親友で好敵手の佐藤駿(16=フジ・コーポレーション)と2人だけ。「シニア初戦が駿と1対1になったので、ずっと楽しみにしていました。2人とも演技に4回転を多く入れているので、練習から4回転合戦。そこも含めて楽しめています」と力にも変えた。

4日のフリーでは、佐藤コーチが振り付けを手掛けた「ロード・オブ・ザ・リング」を舞う。「4回転が増える構成なので、しんどいです」と苦笑いしながらも「最後まで諦めずに頑張りたい」。世界9位相当のSPに続き、フリーもそろえてシニア初優勝を飾る。【木下淳】