山隈太一朗(20=明大)が「東京」を初制覇した。

前日10日のショートプログラム(SP)は57・66点の5位と出遅れ「今年も無理かな…」と思っていたが、切り替えたフリーで全体トップの109・69点。合計167・35点で逆転優勝した。

冒頭、まだ成功したことがない4回転サルコーに初挑戦した。ステップアウトして1回転下の判定となったが、前日に宣言した通りに攻めた。続いて、こちらも投入を予告していた3連続ジャンプを繰り出す。トリプルアクセル(3回転半)-1回転オイラー-3回転サルコー。今季新設の「q」(4分の1回転不足)判定が付いたものの、着氷して挽回した。

「アクセルからの3連続は素直に降りられてうれしい。何とかこらえた、じゃなく、流れに乗れたので先につながると思います」

この後、単独の3回転半は成功。一方で課題のフリップやルッツはミスが出たが、攻めの姿勢でフリー1位になり、SP首位だった小林建斗(法大)との順位をひっくり返した。シニア3年目。「鬼門だった」という東京選手権で初優勝を遂げた。

フリー曲はフランスの男性歌手ミッシェル・ポルナレフの「ポルナレフ・ラプソディー」。昨季から継続する。愛着が深い理由は、2季目だから、だけではない。ポルナレフが昨年、山隈の演技動画を引用して自らのSNSで紹介。山隈は「本人が反応してくださって。初めてアーティストさんとつながれた曲」と感動し、今季も「より曲の解釈を深めて、またポルナレフさんが見てくれた時に、さらに理解してもらえるように」と質を高めていく。

そのプログラムについては「最初と最後のポーズを解説します」とノリノリ。カモメの鳴き声と汽笛の音で始まる冒頭は「まず恋人を港で待つところから始まります。恋人が乗った船が港に着いて、最後は楽しかった思い出とともに、また船に乗って離れていく。それを見送る、ということで手を振っています」。そして豪快に笑った。

「テーマは『愛』です。これまでもそうですが、なるべく自分の人生経験に基づくように演技したい。(今回の愛も)自分の経験ということで」

3年連続の全日本選手権へ、出場権がかかる東日本選手権(11月6~8日、山梨・小瀬)に駒を進めた。「課題の修正と技術の進歩が必要。まだ4回転サルコーは成功していないので、まずは練習で降りて、東日本でも降りて、そこで何を感じるか確かめたい。最終的には全日本で4回転を決めることが目標です」。演技力の向上とともに、もう1段階上のレベルへ突き抜けるため4回転ジャンプ初成功も目指す。【木下淳】