昨年の全日本選手権で準優勝した樋口新葉(19=明大)が、飛び抜けた演技で首位発進した。70・71点。出場した全32選手の中で唯一の70点台で、2位にも10点以上の差をつけた。

冒頭のダブルアクセル(2回転半ジャンプ)から3回転ルッツ-3回転トーループ、3回転フリップと、すべてノーミス。「大きいミスが見た目はなかった。自分の最低レベルができた演技でした」とまずは自己評価した。

ただ、1人だけ70点を超えたことには「細かいところでプラスにならなかったり、ステップのレベルも取りこぼしたかもしれない。3-3(の連続ジャンプ)は良かったけど、フリップは詰まった感じがある。練習から高く上がりすぎちゃう感覚があったので、もしかしたら点数を下げられているかも。そのGOE(出来栄え点)も、もっと取れれば軽く70点は超えると思うので。(下旬の)NHK杯まで仕上げられる部分はあるのかな」と高いレベルで課題を挙げた。

10月3日のジャパン・オープン以来の試合。新型コロナ禍の中で「出られる大会に出たい一方で、試合まで調整する時間がたくさんあるので、うまく使えている。未完成の技だったり、もっと技術を磨いたり、余裕を持って練習ができている。良いのか悪いのか分からないけど、自分は良い方にとらえています」と変則シーズンにも、うまく対応できている。

演技後は「余裕を持って演技できている」という言葉を繰り返した。その意味について、こう説明した。

「ジャンプも跳び方とかは全く変えてないんです。自粛(期間)明けから、合宿とか、すごく良い練習を重ねることができて、練習でも余裕が持てている。それが今回、試合にピタッと合った。練習でもアップでも焦らなくなり、落ち着いてやれている。自信がついてきた。プログラム(Bird Set Free)が2年連続というのも大きいけど、2カ月間、コロナで練習できなかったのに、ここまで持ってこられたのも自信になった。去年の自分を超えられた感覚があって(トリプル)アクセルも少しずつ安定してきて。小さなところで少しずつ自信がついてきて、それが余裕として試合に出ているんだと思います」

7日のフリーでは、その3回転半ジャンプに挑戦する予定だ。「不安要素が、ほとんどない状態。思いっ切り跳びたい。練習では1日2、3本は跳べているので、自信を持って跳びたいなと思います」。充実の精神状態。大技を公式戦で決める準備は万端、整った。【木下淳】