14年ソチ、18年平昌(ピョンチャン)の両オリンピック(五輪)で金メダルに輝いたフィギュアスケート男子の羽生結弦(26=ANA)は北京で3連覇が懸かる。1928年サンモリッツ大会のギリス・グラフストレーム(スウェーデン)以来94年ぶりだが、新型コロナ禍の中、現時点で北京五輪を目指すかは明言していない。男子ショートプログラム(SP)は来年2月8日、フリーは同10日。その前に、まずは今年3月の世界選手権(ストックホルム)へ向かう。

昨年末、羽生は複雑な胸中を打ち明けた。「率直に言うと、五輪のことを考えている場合じゃない」。1年後の北京へ、スケーターの1人としては「競技の最終目標として開催してもらいたいし、出て優勝したい思いは、もちろんある」と語ったものの「ただ、東京(夏季五輪)すら開催されていない現実がある。個人的には『北京五輪を考えてはいけない』というリミッターが掛かっていて、シャットダウンしている」との表現で明言を避けた。慎重に情勢を見極める構えだ。

昨年は拠点のカナダに戻れず、コーチ不在の国内調整を余儀なくされていた。感染拡大を防ぐため、グランプリ(GP)シリーズもシニア11季目にして初欠場。世相も暗かった。「1人だけ取り残され、暗闇の底に落ちる感覚だった。好きなスケートをすることにも罪悪感があった。疲れたな。もうやめようかな」。得意のトリプルアクセル(3回転半)すら跳べなくなっていた。

だが、被災地へ届けてきた「春よ、来い」を舞った時、立ち直れた。自身も仙台市で避難所生活を送った東日本大震災。10年の節目を前に「やっぱスケート好きだな」と前を向き、昨年12月の全日本選手権を制した。今は五輪への思いを封印するが、来月の世界選手権には備える。こちらは明快で「つかみ取りたい光」として出場を熱望した大会だ。最大3枠の五輪出場権確保へ「日本代表として全力で役割を全うしたい」とも宣言。成果と同時に、前人未到のクワッドアクセル(4回転半)挑戦のゆくえも注目される。【木下淳】

宇野昌磨(23=トヨタ自動車) 前回の銀メダリストは20年からスイスに拠点を変更。3月の世界選手権(ストックホルム)へ「五輪の枠が懸かる。今年は特に大事」。

鍵山優真(17=星槎国際高横浜) 昨季はジュニアながら全日本選手権と4大陸選手権で3位。今季はNHK杯で初優勝した。父正和コーチは五輪2大会出場。父子の夢舞台では「メダルが目標」。