2月4日開幕の北京五輪に初出場するフィギュアスケート男子の鍵山優真(18=オリエンタルバイオ/星槎)が、夢舞台に向けて歌手MISIA(43)から「明日へ」の楽曲提供を受けることが13日、分かった。

メダル獲得を目指すと同時に、大会の上位選手らが出演する閉幕日20日のエキシビションで披露する準備を進めている。2年連続でNHK紅白歌合戦の大トリを務め、中国でも高い人気を誇るシンガーの名曲を、日中国交正常化50周年の22年に舞う。振り付けは「パプリカ」などの辻本知彦(44)が担当し、後押しする。

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昨季の世界選手権で初出場2位と躍進し、北京五輪でもメダル獲得を目指す鍵山が、MISIAから「明日へ」を託された。エキシビションは最終日の20日、閉会式の前に行われるフィギュア種目のフィナーレ。そこで初披露するため昨年から水面下で進めてきたプランを、ついに実行する。

鍵山の今季エキシビション曲は、ショートプログラム(SP)7位からグランプリ(GP)シリーズ史上最大の逆転優勝を飾ったイタリア大会、今季世界唯一のGP2連勝を果たしたフランス杯ともに、昨季のSP「ボーカッション」だった。昨年末の全日本選手権では20年ユース五輪で金メダルを取ったSP「宿命」を再演。そして勝負の北京には新曲を携えて向かう。

18歳に期待し、力添えすることを決めたMISIAは昨夏、東京五輪の開会式で君が代を独唱した。世界の約6億人から視聴(IOC推計)された日本を代表する歌手。大みそかの紅白歌合戦では2年連続の大トリとして特別版の「明日へ 2021」を力強く歌い上げた。歌手別視聴率も全体トップの注目度だった。

「明日へ」は11年の東日本大震災復興応援メッセージソング。被災地に届けられてきた一方、近年は曲が持つ役割が拡大した。中国で超が付く人気音楽番組、湖南TVの「歌手SINGER」に昨年日本人として初出演した際は、新型コロナウイルス感染症と闘う中国へ祈りをささげ、世界中が助け合う大切さを口にした。以後、コロナ禍からの再起を願う意味も込められるようになる。日本の医療従事者に対しても支援も重ねてきたMISIAの思いを、日中国交正常化50周年の今年、鍵山が体現する。

振り付けも豪華だ。NHK2020応援ソングプロジェクト曲「パプリカ」を手掛けた辻本が「明日へ」も担当。米津玄師らを支える一流のダンサー・振付師が、鍵山の表現力をさらに引き上げる。実際に踊る氷上指導は五輪2大会出場の鈴木明子が着手している。

MISIA、辻本との接点は社会貢献活動だった。鍵山は18歳になった昨年5月5日、ある発表をした。アーティストや俳優、スポーツ選手ら各界の著名人が活動する際の窓口となる財団法人mudef(ミューデフ)のアンバサダーに就任。先に取り組んでいた2人の志に触れ、メッセージ性ある演技をしたいと共感したという。その辻本から夢舞台へエールも届いた。

「常にチャレンジャーそして挑戦者でありますように! 北京五輪ではさまざまなプレッシャーもあるかと思いますが、そんな環境でさえも楽しんで下さい!! 応援しています」

もちろん、エキシビション出演は五輪の上位進出が条件。2月8日のSPと10日のフリーに人生を懸け、メダルと明日をつかみ取った後の閉幕日に、日中友好の懸け橋になるつもりだ。

◆エキシビション 国内外の大規模な競技会で全種目が終わった後、最終日に実施される演技会。出演者は大会の上位入賞者ら。五輪では5位以内の選手や開催国のスケーターが選ばれて試合と違う演目を披露する。エンターテインメント性が高く、ジャンプや衣装の制限もなく自由な表現が可能。金メダリストはアンコールが定番。採点なし。