ラグビーのリーグワンで最終節に混乱が生じた。

5月7日に東京・秩父宮ラグビー場で開催予定だったリコーブラックラムズ東京(BR東京)-NTTドコモレッドハリケーンズ大阪(大阪)は、約2時間半前に中止が決定。遠方から駆けつけたファンが、現地入り後に中止を知る事態になった。

2日後の9日、大阪には勝ち点0、BR東京に同5が入る決定がなされた。リーグワンの東海林一専務理事は「(中止は)我々の責任だが、勝ち点は規則に基づく通知を受けていただいた。(大阪は)納得されていないと思います」と正直な感触を口にした。

   ◇  ◇  ◇

◆試合2日前(5日)に実施判断に至った経緯

◇5月2日(試合5日前) 大阪の選手、スタッフ全員を対象にしたPCR検査で「13人」が新型コロナウイルス陽性。リーグに報告。検査機関は医療機関連携がないリーグ推奨の検査機関

◇5月3日(試合4日前) 保健所への報告のために医療機関連携のある検査機関で13人が再検査。うち「7人」が陰性。再検査で陰性ながら体調不良等がある選手を含めて、チームドクターが13人のうち「9人」を陽性者に認定

◇5月5日(試合2日前) リーグと大阪が協議し「4人」の陰性者に追加的な検査を実施。1人が陽性、3人が陰性。同時にほかの選手26人にも追加的な検査をした結果、全員が陰性。計29人の陰性者で試合登録人数が充足すると確認し、リーグが試合実施を判断

◆中止判断に至る経緯

◇5月5日(試合2日前) 午後5時過ぎにBR東京がリーグに問題提起

◇5月6日(試合前日) リーグが安全性に対するプロセスを検証。午後8時に大阪に対し、BR東京からの問題提起や論点を連絡。以降はリーグがそれぞれのチームと論点について議論し、中止の可能性を提示。午後11時過ぎ、運営責任者とマッチコミッショナーで協議し、両チームの確認をもって中止にすると確認

◇5月7日(試合当日) リーグが午前6時半からBR東京、8時半から大阪と協議。9時半に中止が決定。同11時50分にプレス発表。発表が遅れたのは午前10時半以降、中止事由を正しく伝えるための内容を協議した結果

   ◇  ◇  ◇

勝ち点の最終確定は最終節翌日の9日にずれ込んだ。大阪はリーグに随時報告しながら試合実施に向けて対応してきたが「一方のチームの責に帰すべき事由により試合中止となった場合」と判断されて、勝ち点は0。BR東京には勝ち点5が上積みされ、2部との入れ替え戦圏内を脱出した。

一方、勝ち点5を得たBR東京に追い抜かれる形となったNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安(浦安)は10位となり、2部との入れ替え戦が決まった。

浦安の選手にはチーム側から報告があり、13日から入れ替え戦に向けて本格的に再始動する。チーム関係者は「ファンの方からは『(入れ替え戦で)あと2試合見られる』とポジティブな言葉をいただき、支えられています」と感謝した。

   ◇  ◇  ◇

9日の記者会見に出席した東海林専務理事との、主な一問一答は以下の通り。

-最初の検査で陽性となった「13人」を除いても、試合に必要な23人がいた

「(当初は陽性だったが、試合4日前と2日前に陰性が確認された)3人は全体練習に参加されていた。3人の陽性の疑いが当初より高くなっている。時を戻せば(試合5日前時点で)13人を隔離して、チームを編成するというのもあった。我々が『これでいい』ということを申し上げて、そのオプションをとらなかった」

-BR東京からの提案は

「『再検査を全員にしてはどうか』とご提案をちょうだいした。これは最終的には私の方でオプションはない(採用しない)と判断させてもらった。試合直前にもう1度再検査をやって、その結果についての解釈をする時間はないと最終的に判断した」

-両チームとのやりとりは東海林専務理事か

「(試合前日の)6日の20時以降は全て参画しています。その前は担当がいますので、担当とチームの間でのやりとりです」

-判断が遅れれば遅れるほど困惑することは、想像できなかったのか

「私が把握したのは(試合前日の)6日の夕刻。本当の意味で問題を把握し、検討に入ったのが6日の夕刻。動きが遅かった」

-再試合ではなく、BR東京に勝ち点5、大阪に同0という決断に至ったのは

「いろいろな議論があった上での(勝ち点)0と5。最初から(再試合をしないと)決まっていたというより、さまざまな考え方を検証して定めた。最終的には再試合は不可抗力(の場合)。それ(今回)は不可抗力ではなくて我々(リーグ)が(中止に)起因するが、チームが(責がある)という考え方。最終的な決定は本日(9日)。毎日、両チームとはさまざまな考え方の交換、整理をしました」

-ルールに縛られすぎとも考えられる

「今回の事案は納得性は正直低くなっているが、ラグビーの特性を考えて、再試合はなかなか行えない。ルールに則ることが本当に正しいのか、他にオプションがあるかは分からない。ある一定の期間内で結論を出して、前に進んでいく時に立ち戻るところがルールしかない。さまざまな方が非常にご納得できない部分があるのを承知した上で、判断に至っている。こういう結果で、思った通りになる方と、思った通りにならない方とが明確に分かれている。運営上のルールとはいえ、そこに則って決めた結果。申し訳ないです」

-ファンへの交通費等の補償

「さまざまな補償を可能な限り、と思っています。オペレーションの面でできる、できないがある。可能な限り、経済的な面での責任は果たしていきます」

【松本航】