2月19日、池江璃花子は瞳(ひとみ)を潤ませながら、プールへ向かって深々と頭を下げた。

会場の東京辰巳国際競泳場は、今年3月末で閉館する。小学1年の頃から幾多のレースを重ね、日本記録樹立や主要国際大会でも金メダルを獲得。病気からの復活を目指していたときには仲間の応援で訪れるなど、苦楽をともにしてきた。多くのスイマーにとって「聖地」でも、池江にとっては成長に寄り添ってくれたわが家同然の場所だ。

思い出の詰まった“ホーム”での、そして4月から社会人になるため学生生活でのラストレース。100メートル自由形決勝。54秒43のタイムで優勝し、有終の美を飾った。レースが終わると池江は、時折目頭を押さえながらコース台中央へゆっくりと歩を進めた。「ありがとう」。感謝、そして巣立ちの決意を込めた一礼だった。(撮影・たえ見朱美)

※【Hot Corner】では日刊スポーツ写真映像部員が撮影した1枚をジャンル問わず不定期で掲載します。