悲願のB2昇格へ-。今、自分ができることをやる! B3岩手ビッグブルズ月野雅人(34)は、1月29日に行われた山口戦で右アキレス腱(けん)を断裂し、全治6カ月の診断を受けた。今季中の復活はかなり難しいが、たとえプレーできなくても、チームのためにできることがある。ポイントガードとしてコート内でチームをけん引し、今はコート外からチームをけん引する月野に、現在の心境を聞いた。【取材・構成=濱本神威】

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昨季、仙台89ERSの主将として、チームの6季ぶりのB1復帰に貢献した月野は今季、自身が12年から15年まで3シーズン在籍していた岩手に8季ぶりに復帰。「僕は何としても今年『B2に1年で上がりたい』という気持ちを持って、このチームなら上がれると信じて移籍してきました」。17-18年シーズン以来、6季ぶりのB2復帰を実現させるため、強い思いを持って移籍してきたが、シーズン途中で悔しい離脱。今まで味わったことのない経験だった。

「シーズン中にカムバックできない。今までのケガとはまた違います」。月野はこれまで捻挫や指の骨折、下顎の骨折など、さまざまなケガを経験してきたが、今回のような長期離脱は初めて。「骨折などは復帰のめどが立つ。2カ月でしっかり戻れるというものだったり、動けるようになる時期はもっと早かったり…。シーズンにもしっかり戻れるということで、これまでは戻った時のイメージがしやすかった」。今回は「全治6カ月」という目安こそあれ、シーズン中にはコートに戻れないかもしれないという現実に、メンタルを保つのが困難だった。「メンタルはすごく難しい。すごく不安定なときもあるし、ケガの状態も日によって痛みが強いときなどがある。リハビリもうまくいっているのかがわからない。いろんなもどかしさがあります」と複雑な胸中を明かした。

それでも、チームのために立ち止まっているわけにはいかなかった。「これだけみんなが頑張ってくれている。プレーはできないですけど、それ以外の部分で、チームでB2昇格をつかむために『自分ができることをやろう』というのが今のモチベーションです」。コートには立てなくても、これまで培ってきた経験からチームに還元できることがいくらでもある。鈴木裕紀ヘッドコーチ(HC=45)とは15~17年までの2シーズンを金沢でともに過ごしていたこともあり、バスケットへの理解度も深い。「コーチの考えるバスケットは、ほかの選手よりも理解できていると思っています。だから、みんながより理解度を増してプレーできるように、プレーに関してアドバイスをしたりしています」。練習中もチームメートのプレーから目を離さず、休憩の合間にアドバイスを送る。「いろんな部分でできる限りこのチームに影響を与えて、一緒により良いものになれればと思っています」。チームのためにできる限りのことをやり続ける。月野は前を向いていた。

チームは現在37勝5敗でリーグ首位に立つ。今季は大型連勝が数多く、今は8連勝中。好調の要因について月野は、「自分たちがやるべきことをやった結果。どの相手に対してもやるべきことをやり続けていることが大事」と分析する。だが、それは今の自分自身にも言えることだ。「治って、またバスケットができることを信じて、強いメンタルを持ってやっていきます」。今やるべきことを見失わず、必ずコートに帰ってくる。

◆月野雅人(つきの・まさと)1988年(昭63)12月1日生まれ。宮崎県出身。延岡学園-鹿屋体育大を経て、11-12年、宮崎シャイニングサンズへ入団。以降、岩手-金沢-仙台-岩手。仙台では4季連続で主将を務め、悲願のB1昇格に大きく貢献。今季は岩手で副主将を務める。ポジションは、ポイントガード(PG)。178センチ、78キロ。