全日本柔道連盟(全柔連)は28日、都内で評議員会と臨時理事会を開いて役員を改選し、山下泰裕会長(66)の退任と中村真一副会長(64=日本製鉄元副社長)の昇格を決めた。

名誉会長に就任する山下氏は、東京・講道館で会見に出席し「任期満了となりました。会長を退任します」と正式表明した。

理由は、スポーツ団体のガバナンスコード準拠。19年に国が制定し、理事の10年を超えた在任が原則として認められなくなった中、山下氏は1996年(平8)の理事就任から27年が経過していた。

17年から務めてきた会長職については、国際柔道連盟(IJF)理事のため、国際競技連盟(IF)役員として例外扱いされてきたが、許される任期が今月までだった。日本オリンピック委員会(JOC)会長としてガバナンスコードの適合性を審査、監督する立場にあることから、退任を決意していた。

在任中の振り返りでは「会長の2、3期目はJOCの会長も兼務することになった。50年に1度の国家プロジェクト(東京オリンピック・パラリンピック)を控えた中、コロナ、大会の1年延期と、JOC会長としての責任を全うすることに注力をせざるを得なかった。心残りはないが、柔道界には申し訳ない」と述べた。

最も記憶に残っている出来事については「やはり東京五輪。あれだけの活躍、成績(史上最多9個の金を含むメダル12個)を挙げてくれたことが今でも信じられない。また、就任時に話した『柔道着を肩に担いで道場へ行く姿が憧れられるような競技にしたい』という目標は、退任後も変わることはありません」と強調した。

東大、新日鉄などの柔道部に所属していた中村新会長は「レジェンドである山下前会長の後任を務める重責に身の引き締まる思い。柔道界の発展のために努力していきたい」と所信表明した。【木下淳】