14年ソチ、18年平昌オリンピック(五輪)2連覇で、昨年7月にプロ転向した羽生結弦さん(28)の初のツアー公演が4日、さいたまスーパーアリーナで初日を迎えた。

本公演は羽生さんが「大好き」というゲームからインスピーレションを受けた「繰り返し」をテーマに、人生における葛藤と成長の物語を演じた。単独公演としては第3弾となるアイスショーで、第2弾「GIFT」に続きPerfumeなどの演出で知られるMIKIKOさんが演出を担当した。

自らすべての振り付けを手掛けた「ファイナルファンタジー10」のテーマ曲「いつか終わる夢」で開演。ゲーム画面を模したモニターにドット調のアニメーション、荘厳なプロジェクションマッピングを融合させた迫力のある演出を背景に、大胆かつ優雅な滑りを披露。冒頭からファンの心をわしづかみにした。

演技のたびに衣装も替え、さまざまな表情を見せた羽生さん。カメラの正面でポーズを決めると、会場は悲鳴に近い歓声に包まれる場面もあった。

前半最後となった新演目「破滅への使者」の前には、アイスショーでは異例の6分間練習を実施。緊張感が漂う中、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)やサルコーやルッツなどの4回転ジャンプも次々と披露した。

その後も初公開となる新演目を含め、「春よ、来い」や平昌五輪のフリー「SEIMEI」など計12曲を舞った。会場を埋め尽くした約1万4000人の観衆を、2時間半にわたり魅了。全演目が終わると、自然とスタンディングオベーションが起こった。

羽生さんは万感の表情を浮かべながら、「私は最強」に乗ってリンクを周回。演出を手掛けたスタッフやファンに感謝を伝えた。

「ここまで作り上げるにあたって、たくさんの方々のお力があってこうやって作ることができました。そして何より、こうやって自分が表現したいことだったり、滑りたいことを見てくださる方々のおかげだなと改めて思っております」。

そして「少しでも皆さんの中の命に対する考え方だったり、今日明日というものを生きていくにあたっての選択肢の連続というもの、本当に人生というものをやめない限りは明日は続いていくので、ぜひそんなことを考えながら毎日を生きてほしい。どうか皆さんの中にちょっとでも刺さるものがあったらいいなと思う」などと笑顔で呼び掛けた。

アンコールを終えて最後に舞台袖へはける際には、マイクを使わず「ありがとうございます」と、声を張り上げて謝辞を示していた。

埼玉公演は5日まで行われ、その後は佐賀公演(24年1月、SAGAアリーナ)、横浜公演(24年2月、ぴあアリーナMM)となる。